―科学の子は悪魔の子― ページ5
なんだかよくわからないロボットと出会ってソッコーで別れてから数分後。まだ目的地に着きません。
「あのジジイ、ボケてるからな。もしかして地図じゃなくてチーズ渡されたのかも……」
重症です。ジェラルド王も、チーズだと見破れないチャクロンも。もちろん、渡されたのはチーズではありませんけれども。
「あ? なんだありゃ」
足を止めて、さっきとまったく同じリアクションをするチャクロン。何に対してリアクションしたのでしょうか。
それは、爆音と地響きを伴ってこちらに向かってくる、土煙に対してでした。
「ま、またかよ!」
驚いている間に、土煙はチャクロンの目の前で緊急停止。また凄まじい量の土埃が辺りで舞い踊ります。
「げーほごほがほごっほ! フィンセント・ファン・ゴッホ!」
また凄まじい量の埃を吸いました。こんな調子では、掃除機にはなれません。
煙が晴れたとき、目の前にはやっぱりロボットがいました。さっきのヤツと形が似ていますが、胴体が一回り大きくて最初から二本足で立っていました。
そして、肩に文字が書かれています。『Ω』と。
ただ、そんなのどうでもよくなるぐらいに目を引くのが、両腕の大きな爪です。触れるものすべてを切り裂くと思われます。痛そうです。
そのギラリと輝くシロガネの凶刃が、チャクロンの両側頭部に突きつけられているものだからさぁ大変です。
「キサマ、カエルノ居場所ヲ教エロ!サモナケレバハイジョスル!」
「知りませーん知りませーん、カエルなんて知りませーん」
溢れる涙が地面を濡らします。突きつけられた両腕の爪が、うぃーんうぃーんと機械音を鳴らしながら右に左にぐるぐる回ります。
もう数センチ近づくだけで、チャクロンの頭には見事な穴が開くでしょう。ゲンコツでぐりぐりやられるのとはレベルが違います。死んじゃいます。
「本当ニ知ラナイノカ!モシ隠シテイルノナラバ……」
「ほんとうにしりませーん。カエルなんて食べたことありませーん」
そろそろ別の液体が漏れ出てきそうです。怖い映画を見ると夜一人で行けなくなる、アレです。
しかしその涙ながらの主張が届いたのか、ロボットは爪をぐるぐる回すのをやめ、チャクロンの頭から離します。そして、
「ハイジョスル! ハイジョスル!」
とか叫びながら、さっきのロボットが走っていった方向へ駆け出していきました。
しっかり腕を振って、陸上ランナー顔負けの綺麗なフォームで走っていきます。チャクロンの位置からロボットの姿が見えなくなるのは、あっという間でした。
「な、なんなんだよぉぉぉ……」
ぺたりと座り込むチャクロン。すっかり腰が抜けています。
…
…
猫に助けられた後、立て続けに謎のロボット×2に脅しつけられたチャクロン。ちょっとは冒険らしくなってきました。
結局、謎のロボット×2の正体はわからずじまいですが、ただ一つわかっているのは、
「まだ着かねー! あのジジイ、帰ったら覚えてろ!」
二話目終了の時点で、チャクロンはまだ次の国に到着できなかったということです。こんな調子で大丈夫でしょうか。多分駄目です。
~次回『旅は道連れ、死ぬときも道連れ』に続く~