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「ぐすん。いたいチャオ~」
「だー、もう。メソメソ泣くんじゃない。こんなのどうってことないだろう」
春の日差しが降り注ぐ、明るく静かなチャオガーデン。
そのチャオガーデンに、赤い影が二つ。それは…
「オマエも俺のチャオなんだから、もっと強くなれ!」
「ぐすん。無理チャオ~」
それは、ナックルズと、ナックルズチャオでした。
このナックルズチャオ、名前をチャッコーと言います。チャッコーは、ナックルズが育てているチャオです。
でも、この二人は性格が正反対。
ご存知ナックルズは、喧嘩っ早く、腕力にとっても自信がありますが、チャッコーは喧嘩は好きではありませんし、チャオカラテの成績もさっぱりです。
とてもおとなしい性格なので、よく『ホントにナックルズのチャオなの?』とみんなにからかわれます。
姿かたちはナックルズにとてもよく似ていますが、内面はまったく似なかったようです。
いまもほら。チャオカラテで手を擦り剥いたと言って泣いているチャッコーに、ナックルズが絆創膏を貼ってあげています。
「ほら、コレでもう大丈夫だろ?」
「ぐすん。ありがとうチャオ…」
「まったく…ほんとにオマエは俺と正反対だな、何もかも」
「チャオ…ナックルズは、喧嘩とか怖くないチャオ?」
チャッコーは、涙をぬぐいながら訊きました。
「あぁ、全然怖くないさ。怖いと思うから怖いんだ。怖くないと思えば怖くない!」
「…ナックルズは単純なんだチャオ…」
チャッコーは、ボソッと言いました。
「あ、なんか言ったか?」
「な、なんでもないチャオ!」
――次の日。
「おいチャッコー」
ナックルズがチャオガーデンにやってきました。手に何かを持っています。
ナックルズに気づいたチャッコーは。ナックルズの元へ駆け寄りました。
そして、ナックルズが持っているモノに気づきました。
「チャオ?それ何チャオ?」
「これはな、種だ」
ナックルズが持ってきたのは、木の実の種でした。
「いいか、コイツを地面に植えるとな、実のなる木が生えてくるんだ」
「みのなるき?」
「そうだ。オマエが毎日一生懸命世話をしてやれば、オマエの大好きな丸い実がたくさん実るんだ」
チャオはそれを聞いて飛び上がるぐらい喜びました。
チャッコーは、丸い実が大好きです。
「チャオー!ホントチャオかー!?」
「あぁ、ホントだ。けどな、そのためには毎日毎日水をやって、ちゃんと世話をしてやらないとダメだ。いいか、お前がコイツを守るんだぞ。出来るか?」
ナックルズは、左の手の乗せた『コイツ』を右手で指差して言いました。
チャッコーは言いました。
「チャオ!絶対守るチャオ!」
「よし、よく言った!」
ナックルズはチャッコーに種を渡し、
「がんばれよ!」
と言い残して去っていきました。
チャッコーはナックルズが見えなくなるまで手を振ってから、
「チャオ、早速植えてみるチャオ」
とシャベルを取り出し、植える場所を探し出しました。
「チャオ、ここがいいチャオ」
そこは、ちょうどチャオガーデンの中心あたりでした。
チャオはシャベルでその場に小さな穴を掘り、種を植えました。
すると…
――ぴょこんっ
…と、小さな芽が地面から飛び出してきました。
「チャオ~、凄いチャオ~」
飛び出たばかりの小さな小さな芽を、チャオはしばらく眺めていました。
この芽が大きくなって、木になって、丸い実をたくさんつけて……。
チャッコーは、期待に胸を膨らませます。
「そうだ、お水をあげなきゃチャオ」
チャッコーは、ぞうさんジョウロに水を汲み、チョロチョロと小さな芽に水をやります。
「たくさんあげるチャオ~♪」
鼻歌を歌いながら、水をやります。
それが終わると、『早く大きくなあれダンス』を踊りました。効果があるかどうかは、わかりません。
結局その日は、ずーっと小さな芽のそばでチャッコーは過ごしました。
そしてそんな日が、コレから数日続くのでした。