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それからの間、少女とリルダはいつも一緒だった。
少女もリルダと一緒なら元気になることができたし、笑うことだって出来た。
医師や看護婦とも話す時間が増え、いままで暗かった病室にも色々な訪問者がくるようになり明るくなった。
「今日もいろんな人が来たね~リルダvv」
他の人たちが病室から帰ったあと少女がリルダに話かけるのはもう毎日の恒例となっていた。
リルダもその言葉に嬉しそうに反応する。
2人はたぶん1番の分かり合える存在なのだろう。
だが最近リルダは元気がなかった。
少女もそれにうすうす気が付いていたのだろう。
リルダをいつもより気遣っていた。
そしてそんなことが続いたある日・・・
少女が起きた時となりにリルダの姿はなかった・・。
少女はびっくりした。
いつもいつはずのリルダがいない!!
少女はいても立ってもいられなかった。
今までずっと一緒にいた友達だったから・・・
誰よりも自分のことを理解してくれる唯一の友達だったから――。
少女は探した。
今までに自分がリルダと一緒にいったことがある場所・・・
思い出の場所・・・
ちょっとでも思い当たった場所にでも足を運び、血眼になってさがした。
だが・・・リルダはどこにもいなかった。
「リルダ・・・」
すべての場所を探し尽くした少女は暗い気持ちで病室へと戻った。
電気も付いていない病室は真っ暗で唯一開け放たれた窓から外の月光が差し込んでいた。
「リルダ・・・どこにいっちゃったの・・・」
少女はポツリと呟いてそっと窓を見上げた。
窓のそとにはきれいな星達とちょっとかけた三日月が顔を覗かせている。
星!!
少女はその星をみるなりある場所を思い出した。
病院の屋上!!
少女は1度だけ立ち入り禁止の屋上に行った事があった。
いつもは絶対に入らせてもらえないのだが、流れ星を見る為に医師に許可をとってリルダと2人で
スターウォッチング(天体観測?)をさせてもらったのだ。
リルダは今日もそこにいるかもしれない!!
わずかな希望をもって少女は屋上へと急いだ。
立ち入り禁止とかいてある看板をくぐりぬけ、屋上へと続く扉のノブをそっとにぎった。
リルダ・・・ここにいるんよね・・・。
あたしをおいてどこにもいかないよね・・・
少女はいなかったらどうしよう・・・と不安をかかえてぐっとノブを回した。
ちょっとさび付いた扉はギィと鈍い音おたてて開いた。
静かな屋上にドアの閉まる音だけが静かに響く。
月光と星の光がやさしく照らす中
少女はゆっくりとあたりをみまわしたが、やはりリルダはいなかった。
「リルダ・・・」
悲しそうにそう呟いた少女の目に何かが止まった。
「なんだろう・・・あれ・・・」
少女は息を飲んで屋上の隅っこのほうにおかれていた紙にちかよった。
紙の上には石の重しが乗っけてあって飛ばないように工夫されているのが分かった。
そっと重しをを持ち上げその紙を開く・・・
その紙にはこうつづられてあった。
”イママデナンノヤクニモタタナイボクトイッショニイテクレテアリガトウチャオ
ボクハズットウレシカッタチャオ
サリアニモウイチドアエテヨカッタチャオ
サリアハイツデモボクのゴシュジンサマチャオ―――。”
少し大きめの字でここまでつづられていてその後には少女とリルダが遊んでいる絵が描かれていた。
この手紙をみたとたん何らかの衝撃で映画のムービーでもうつしているようなたくさんの思い出のフィルムが
少女の頭の中に溢れかえった。
記憶を失う前の出来事―――。
リルダを買ってもらった時の嬉しさ。
勉強の妨害といわれリルダを両親に捨てられた時の悲しみ・・・
その後両親を失った悲しさ―――。
そしてもう1度リルダに会えた時の嬉しさ。
今まで忘れていた・・・大切な事・・・大切な思い出・・・
すべてが積み重なるようにして少女の頭の中に入っていった。
「リルダッ・・・」
少女の頬を暖かい物が流れた。
「リルダ・・・あたし・・・貴方のこと忘れてた・・・貴方が私のチャオだって・・・コト・・・ごめんね・・・ごめんね・・・」
少女はヒックヒックしゃくりあげながらぎゅっと紙をにぎりしめた。
「リルダ・・・あたしがんばるから・・・お父さんもお母さんもいないけど・・・独りぼっちじゃないから・・・」
少女はそこまでいうと下を向いていた顔を夜空に向けていった。
「リルダ!!あたし・・・沙理亜は、いつか立派になって・・・また貴方を迎えにいくからっ!」
そうさけんだ少女の声は夜空に吸い込まれるようにして消えた。
もう振り返らないよ。
一生懸命前進していく。
だってあたしは1人じゃないから。
いつでもどこでも一緒だよね!リルダ。
END★