第6回
~工房~
やわらかそうな足が、やわらかく石段の最後に足をつけた、
続いて僕もその石段を上りきる。
そこにあったのは、
古めかしい、
ブリキで出来たようなさびの浮いた建物、
古い絵本に出てくる、小さな工場のような小さな工房。
古ぼけた、くすんだ青の小さな扉、
ためらうでもなく慣れた風、レオンハートは扉をくぐる。
急ぎ足、パタンと扉は閉じてしまい、聞こえるのは小さな足音。
たんたん たんたん、少しずつ遠くなる、
板金の床に妙に響く足音。
少し慌てて、でもためらって、
扉の前で、軽くノックと。
「おじゃまします」
そうことわって扉に手をかける。
古ぼけた扉は、その見た目とは裏腹に、
きしみひとつあげるわけでもなく、すっ、と開いた。
機械油のにおい、薄暗い通路、
奥に見える階段、他に扉も見当たらず、
僕はそのまま階段を上った。
ゆるい弧を描いて上る階段は、上にあがるに連れ明度を上げて、
あたりの薄暗さがなくなる頃に、十字の格子の嵌まった丸窓。
階段の上は、同じようにゆるい弧を描いた通路、
その先には小さなベランダのついた明り取りの大き目の窓、
窓の格子越しに見えるのは、工房の側面
海へと伸びるような細長い崖、
差し込む光と、海の照り返しがまぶしい窓。
照らされているのは窓の前の扉、
小ぶりの、「T」とかかれた鍵のかかった扉。
二階では、レオンハート見つからず、
ほかにも何かあるわけでもなく、僕は再び下に降りる。
鋼の壁にはさまれた、薄暗く狭い通路、
一階は同じ眺め、でも。
「まぁ。誰にでもよくある事」
先ほどは見落とした右の壁の突き当たり、
入り口の脇の内開きの扉、淵からかすかに漏れる明かり。
右の壁、実際には隔壁? の向こう、
慣れ親しんだ、人口の明かりに照らされた、
格納庫の先の工房の一角。
レオンハートは立っていた、
見つめる先には作業台、
その上は、壊れた機械? 見たことのある形、
外された外殻、台の上に転がるいくつかの部品、
横たわる、涙滴型の頭を持った簡単な人型の機械、
外装の外されたそれはオモチャオで、
それが何でここにあるのかも、
レオンハートが何で知っているかもわからないけれど。
でも、後姿のレオンハートは今どんな顔をしているんだろう
~つづく~