最終話(3) チャオカラテ

「何とか間に合ったな」
「意外と楽だったねぇ」
「こいつがなかったら、長引いていただろうからな」
閉まっていく四隅のドアを眺めながらノアルとディが話す。確かに、笛が無かったら危なかったかもしれない…。とディも感じた。その時、床が少しだけ揺れた。

「…!?何かが下から来るぞ!!」
「えぇぇ!?」
「全員、戦闘準備を…!」
ノアルが叫ぶ。全員、慌てて戦闘の準備をする。そして、床の中央が開き、下から足場が出てきた。そこには、左腕に見慣れない物を装備した0がいた。

「うおぉぉ!?」
0の左腕に装備された兵器から、バルカン砲による無数の弾が発射される。狙われたノアルはなんとか逃げ切る。バルカン砲の攻撃が終わった瞬間、無数のミサイルが発射された。ミサイルはホーミング機能があるようで、逃げ回るチャオ達を追いかけている。そして、それによってチャオ達は次々と倒れていく。そして、残ったディとノアルにもミサイルが当たろうとしていた。だが、その瞬間エレベーターのある方向から炎が飛んできてミサイルを壊した。ディ、ノアル、0の三人はエレベーターの方を見た。そこには、スラッシュがいた。姿形はいつものままだが、なんとなく威圧感がある。

「ふぅ…。変なやつがいるな。俺はチャオじゃないやつとの戦闘は苦手なんだがなぁ」
「…何を言っている?私はどう見てもチャオだ。そして、最強だ。貴様もこの兵器によってやられるがよい」
「お前のようなやつはチャオじゃない。チャオは兵器なんか使わないし使う事も望まない」
「フハハハハ!!何を言うか!貴様らも武器を持ち、戦っていたではないか!!我らチャオが今、本当に望んでいること…!それはこの最強の力だ!!貴様にもわかるだろう?殺人者に育てられたノアル!」
「なっ…!?」
0の言葉にノアルは驚いた。ディも目を丸くしている。なぜなら、ノアルもディも育てられたのはディマガという一人の男だからだ。

「なぜやつが名前を隠しているのか…。それは殺人者だからな。そうそう町中で本名は言えまい。そして、そんなやつに育てられた貴様も私と同じであろう?力が欲しいのだろう?」
「何を言うか!!例えあいつは殺人者だとしても…。俺にそんなことを教えるようなやつではない!」
ノアルは紫半透明の刃を出し、飛ばす。その刃を0は右腕の龍で受け止め、素早く左腕の兵器を三人に向ける。赤い標準が三人を狙う。エネルギー弾を撃つつもりのようだ。ディとスラッシュが0に向かって走り出す。スラッシュが炎の球を口から何回か放って標準をずらそうとするが0は右手の龍で全て防ぎ、標準をずらす様子は全くない。

「ディ!俺が全力であいつを壁に押し込む!あとはお前の力で壁ごとぶっ飛ばせ!!」
そうスラッシュがディに向かって言うと、スラッシュがスピードを上げて走る。エネルギー弾が放たれる前にスラッシュが0の懐に飛びこみ、そのまま壁に何度か殴りながら押し込む。そのまま0を押さえてた。ディが真後ろに来たとスラッシュが感じると、スラッシュは素早く横に飛んだ。それとほぼ同時にディの光となっている右腕が0の腹を殴った。そのまま、ディが壁を突き破ろうと力を入れている。

「もう戦いは終わったんだ!!これからは僕が絶対に…誰にも武器を持たせない!!」
ディがそう叫びながら力を思い切り入れる。壁が突き破れ、0が吹っ飛ばされる。そして、そのまま下へと落ちていった。



その後、牢屋に閉じこめられたチャオは開放され、さらにディマガ達が城を乗っ取った。やがて、新しい王も決まり、別にあった大型兵器も破壊された。こうして、平和な世界に戻ったようだ。そして……

「チャオカラテ大会、決勝。ディ選手対スラッシュ選手!」

「まだ、チャオカラテに慣れていないチャオが大半のようですね…」
「あぁ。そりゃそうだろう。武器を使っていたんだからな。武器を使う戦闘とチャオカラテには大きな違いがあるからな」
「…攻撃方法、それとチャオカラテの防御方法は回避だけなのに対し、武器や防具が有れば受け止めることが可能な点…ですか」
「あいつらはどんなやつが相手でもそれをやってきたんだ。あの時…最もチャオらしかったチャオはあいつらなんだろうな」
この世界の中にいる一つの生命として生き、そしてチャオとして武器など手に持たずに。命がけのあの時でもそれを貫き通した二人のチャオがそこにはいた……。

「試合開始!!」

そして、この世界は変わっていく。誰も戦いで死ぬ事のない平和な世界へと。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第169号
ページ番号
36 / 37
この作品について
タイトル
カラテの世界
作者
スマッシュ
初回掲載
週刊チャオ第134号
最終掲載
週刊チャオ第169号
連載期間
約8ヵ月3日