1話(1) 未完成の希望

カラテの世界 1話 未完成の希望

~新大武道帝国憲法・第一条~
この帝国のチャオは1歳になった瞬間から
命を賭けた戦いの旅をしなければならない。
1万ポイントを達した者は、我が帝国の特殊部隊「チャオ部隊」に入る。
この規則を破った場合は、飼い主も含め死刑とする。

また、旅の内容はルール無用。ポイントについては以下の通りとなる。
ポイントは、チャオを倒すと1、殺せば1.5、倒せなかったがダウンすれば0.1、ある程度吹っ飛ばすと0.2、倒された場合は−5とする。また、ポイントが0未満となると、それから12時間以内に0以上にしなければいけない。



ここは、大武道帝国のとある森。ここに、1人の男とチャオが住んでいた。男は自らを「ディマガ」と名乗る。だが、これは仮名。本名は不明である。そして、チャオの名前は「ディ」。年齢は1歳。本来ならば旅に出るはずなのだが、彼らは隠居生活をしているため、その必要は無かったのだった。

「ウララララララララララッ!!」
ニュートラルノーマルのチャオ「ディ」は姿勢を低くして戦っている人間の男「ディマガ」に攻撃している。しかし、攻撃は彼の両腕で防がれ、パンッパンッパンッと音を立てているだけだった。

「隙ありっ」
「のあわぁぁっとあぁうえぉぁ!!」
ディマガは低い姿勢のまま、ディの足を蹴って払う。ディは、地面に手をついてから、足をついて着地した。

「…駄目だな」
「えぇっ!?なんでよ!?ちゃ~んと倒れずにすぐに立ち上がったよ!?」
「人間ならばそれでいい。だがな、お前はチャオだ。飛ぶ能力で落下速度を遅くする事もできるのだぞ」
「うわー。そうはいっても足払いされつつ飛ぶのは難しいノ!!」
「知らん。そんなこと。いいか?集中して相手の隙をうかがい、右手にパワーを集中させて打ち込むんだ。」
「うわー。知らんって…。あと、後半は毎日100回くらい言われているから覚えてるってば~」


「む…。なんか、外が騒がしくないか…?」
「えぇ~?そんなことないよぅ。それより訓練とやらをやろうよ!」
「…。そこの隠し部屋に隠れていろ」
「え?」
「来るぞ、奴らが」
ディマガは軽く壁を叩く。すると、音も無く壁の一部が奥に動く。そこにディを入れ、その動いた壁を今度はディが叩く。すると、元の通りとなった。その瞬間、ドアをノックする音が聞こえた。ディマガはドアを開けた。すると、複数の兵隊が入ってきた。

「…?どうした?ここにチャオはいないが」
「…。そのようだ。失礼した」
兵隊達は家の中を見渡してから家から出て行った。数分様子を見て、ディマガは壁を叩き、動かす。そして、ディが壁を叩くと同時に出てきた。

「ここも見つかったか…」
「危ないねぇ」
「これからは思い切り訓練もできなくなるな…」
「…僕、旅に出るよ」
「なっ!何を言っている!!」
「僕、本気だよ?だって、このままじゃもしかしたらディマガさんも殺されちゃうよ」
「…」
「ね?お願い」
「…わかった。行くがよい。このカードには5000リング入っている。持って行け。後、荷物を持つ事は自分の動きを鈍らせる事だ。食い物は買ったらすぐに食べろ。あ、あと、この腕輪を着けていけ。そうでないと政府の奴に襲われるからな…」
腕輪には、5桁の数字が00000となっている。これにより、何ポイントゲットしたかだけでなく、このイベントに参加しているかどうか確認するのだろう。

「うん。わかった」
そして、ディは旅に出た。…命を失う可能性すらある恐ろしい旅に。彼がドアを開け放ってから数分後、ディマガはため息混じりに呟いた。

「…アイツは特別な奴だったからな。最後まで鍛え上げられなかったのは非常に惜しい」

このページについて
掲載号
週刊チャオ第134号
ページ番号
1 / 37
この作品について
タイトル
カラテの世界
作者
スマッシュ
初回掲載
週刊チャオ第134号
最終掲載
週刊チャオ第169号
連載期間
約8ヵ月3日