0 始動
時にして〝今〟より200年もの前―
世は未だ、悪魔と人とが住み着く平和無き戦乱―
始まりを謡ったのは、一部の悪魔による〝荒天〟だった。
乱れに乱れた世を「力」によって制圧した。
しかし、無論の事、悪魔の目的は、世を制圧する事では無い。
人間界からの莫大なエネルギーを経て、“天界”を支配する事だった。
いわく、〝荒天〟。
それに気付いた“天界”の悪魔らは、人間に手を貸す事によって、―いや、人間の味方につき、自らを盾として立ち塞がるのは、無理であった。
なぜなら、悪魔はこの世に存在出来ない。
人間という個体を完全に支配するしか、手立ては無いと思われていたからだ。
だが、状況を打破すべく、一人の人間が名案を企てた。
人間と「共生」する。
銃火器、原子爆弾、水爆、様々な兵器を持ちうる中で、
人間と「共生」する―いわば、魂に纏う盟約を行った。
その、始まりの〝荒天〟と、「共生」による〝盟約〟から、早30年。
未だに戦乱は治まっていない。
―が。
悪魔に支配されつつある世を、己が身に宿る信念と、その強き眼光によって、救うべく。
全くもって無名であった、たった一人の、少年が。
―立ち上がった。
以前まで、精神的に死んでいた彼が。
二度と起き上がれない程に痛めつけられる境遇を経た彼が。
遥か東方の島国にて、
時は蠢きを見せる。
後に「完全なる天成」と異名される英雄が、〝聖誕〟した。
太陽暦、西暦の始めであるとされた聖者の生まれる誕生日に…。
0 始動 完