十時間の命 -His life has only 10 hours-




ゲーム上では、チャオが1つ年をとるのは、100分。
つまり、6歳まで生きられれば、チャオは10時間生きられるのです。
この時間は、チャオガーデンにいる時間しかカウントされないので、けっこう長く感じるかもしれません。
でも、もし、これが現実だったら。
たった、10時間しかいきられない、チャオがいたら。
もしこの世にもチャオがいて、そんな病気があったら。

                                   週刊チャオ第94号「たった10時間の命」より




「それでは、チャオの登録をしますので、名前を教えて下さい」
医師にそういわれて、俺は、チャオにまだ名前をつけていなかったことに気付いた。
このチャオは生まれたばかりなのだから、登録が必要だなんて当然なのにうっかり失念していた。
街でチャオのタマゴの販売店を見かけて衝動的に買ってしまったので、名前のことまで頭が回らなかったのだ。

俺はさっき買ったばかりのピュアチャオに声をかける。
「どんな名前がいい?」
するとチャオは首をかしげてポヨをハテナにし、なにやら真剣に考え込み始めた。
うーん、どんな名前がいいのだろうか。
こいつはピュア・・・英語で純粋の意味・・・

そのとき、チャオのポヨがビックリマークへと変化した。
「名前決まったちゃお!」
「どんな名前?」
「ヨコシマ!」
間髪入れずに答えるチャオ。俺はその響きに、正直唖然とした。
チャオを飼い始める時には、毎度何かしら驚かされるのが俺の通例だが、今回もかよ。


「どうひねったら、そんな名前になるんだ・・・」
「ええ!気に入らないちゃおか!?」
チャオは上目遣いのおねだり目線で俺を見てくるが、止めて欲しい。

「ヨコシマというのは、漢字で『邪』と書くんだ。ジャとも読む。
 邪道とか、邪悪とかのジャだ。そんなの嫌だろう?」
「うーん、じゃあ・・・」
チャオは、しばらく考え込んでから、こう言った。
「お前が考えろちゃお!」


結局、チャオの名前はヨコシマに決まってしまった。
俺が思いつく限りの全ての名前を、切り捨てられたのだから仕方がない。
そんな意地悪な性格なら、ヨコシマという名前でも、まあ、悪くない・・・たぶん。




「それでは、最後の検査です」
初老の医師が、カルテにさらさらと文字を書き込む。
看護師がやってきて、俺たちを奥の検査室へと通す。
無機質な部屋の中央には、大きなカプセル型の機械が据えられている。
チャオの初期障害を測定するやつで、しかも結構新しいものだな、と、俺はぱっと見に認識した。


自分でいうのも何だが、実は俺は、チャオについてはかなり詳しい。
初めてチャオを飼ったのが、小学校高学年の頃だったろうか。
中学に入ってからは独学でチャオについて学び始め、それ以降チャオにのめり込んでいる。

現在は某大学の生物学科に在籍し、チャオについて研究している。
10匹以上のチャオを一度に飼っていたことも一度や二度ではない。
そんなわけで俺は、チャオ医療の知識もある程度身につけているのだった。


看護師の操作で、カプセルのふたが開く。
「じゃあ、こちらにチャオを入れて下さい」

「こんなの自分で入れるちゃお!」
チャオ―ヨコシマはかくのごとく宣言して、カプセルまで歩み寄り入り口へ這い上がろうとする。
当然、看護師さんに止められる。
俺はヨコシマを抱えると、カプセルの中に下ろしてやった。
ヨコシマはいかにも不満を言いたげな表情だったが、仕方がないじゃないか。

新型の機械だからなのか、カプセルの中はふわふわとした素材で出来ていて、
ヨコシマはそこに入ってしまうと、さっきまでの不満はどこへやら、気持ちよさげに収まった。
看護師がふたを閉め、俺は部屋の隅の離れた場所に立たされる。
部屋の外に看護師がつかつかと歩いていったのち、部屋の明かりが落とされ、検査が始まる。

赤い光がカプセルを横切る。そして何度も往復する。
数分後、赤い光が消え、検査が終了した。

看護師はすぐ戻ってくるかと思っていたのだが、なかなか戻ってこない。
結局、部屋の明かりがまたつくまでに、数分も待たされてしまった。

看護師はカプセルの中からヨコシマを取りだし、俺に渡してくれる。
その笑顔が少し硬かったことに、俺は気付いた。
「ものすっごかったちゃお!」
と、カプセルの中での感動を伝えようと、ヨコシマは一生懸命話してくれようとするのだが、
そうこうしている間にも、看護師は一方的に診察室へと向かって行ってしまう。
俺は何か、その行動に不安なものを感じた。
「話はあとで聞くから、もういくぞ」
俺たちは看護師のあとを追って、診察室へと戻る。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第301号&チャオ生誕9周年記念号
ページ番号
1 / 6
この作品について
タイトル
十時間の命 -His life has only 10 hours-
作者
チャピル
初回掲載
週刊チャオ第301号&チャオ生誕9周年記念号