JOY
少し昔の話を思い出した。
妹がチャオにはまっているのをみて、
姉である私までチャオにはまってしまった。
なので、レースとかはいつも姉妹対決の場でもある。
とりわけ、早く学校から帰ってくる小学生の妹の方が、
強いので、私はいつもチャオに負けてばかりだったが。
ある時、私と妹で遊び歩いているとき、
そろそろ帰ろうと思っていた頃、
ある店のUFOキャッチャーにチャオがいるのを見つけた。
妹はもちろんせがんだ。
私はそれは中学校の校則違反と知っていたが。
どちらもいつも友達と遊んでいて、
滅多に二人で遊ぶことは無いと思った私は、
顔をうつむけながら歩いた。
100円玉を穴の中に入れる、
私は中間テストよりも集中してボタンを押す。
あほらしいとは思いながらもいつもレースで、
連敗している「姉」としてはプライドがある。
しかし、無情にもチャオはクレーンからたこのように、
スルリと抜けていった。
妹のレース時以上の冷たい目線が私を差す。
―姉ちゃんって意外と不器用なんだね。
―う、なんならあんたがとってみなさいよ。
―おやすいご用で~。
妹は慣れた手つきで、ボタンを押していく、
そして、100円からチャオ人形に見事入れ替わった。
―・・・やるね・・・。
―あはは、私がお姉ちゃんだったらいいのになぁ。
―ふん、歳だけは負けるもんですか。
―そんなことで勝負してどうするの、お・ば・ちゃ・ん。
私の方が長生きできるもんねーだ。
私はチャオ人形を持って逃げようとする妹を、
あわてて追いかけた。
どうせ又家に帰ったらレースしようと言うに違いない。
でも、このときが最後の妹の無邪気な笑顔だった。
大きな衝突音がした。
妹とトラックが激突。即死だった。
原因は明らかにトラックのよそ見運転だった。
私はチャオのゲームを見つめた。
妹がいない以上、私のチャオは強くなって、
妹とレースで勝つことができるだろう。
でも、私は何も言わず、ゲームをしまい込んだ。
だって、妹は私に勝つことにとても喜んでいたからだ。
今となってはとてもかわいい無邪気な妹だったのかもしれない。
そんな妹の「喜び」はやっぱりとっておこうと思ったのだった。
そして、今でも大人になった私は笑顔の妹の遺影を見ながら、
ふと、クレーンゲームでの言葉を思い出す。
あのチャオのような満面の笑みで言ったあの言葉を。
―・・・、私がお姉ちゃんだったらいいのになぁ。