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世の中の人間を二種類に分けるとしたら、どう分ける?
そう質問されたなら、大抵男と女だとかそういう答えが来る事だろう。
事実、俺もちょいと前まではそういう考えだったからな。
だが、そんな考えもある日を境に思い切り変わってしまった。
環境というものは恐ろしいものである。
誰かの家に居候する必要が出てきてしまった昔の俺に言いたい。
居候なんてしなくていいから野宿してくれと。
とにかく、自称チャオ博士のあいつの家に居候することになってから
俺の人生は大きく変わった。もう、例えようがないほど。
最初に言っておこう。
この物語(というほどスケールはでかくないのだが)の登場人物は二種類に分かれる。
自称博士の変人と、変人じゃない普通の人間。その二種類だ。
夜。仕事から帰ってきた俺は厄介な事に巻き込まれずにゆっくりと寝られることを願いつつ家のドアを開ける。
ドアを開け、ただいまと返事のこない言葉を言おうとした瞬間スリッパが飛んできた。
不意に飛んできたその飛行物体は見事に俺の顔に当たり、
もしも俺がRPGの雑魚モンスターであったら倒れていたであろうダメージを俺に与える。
「っだあ!!いきなりなんなんだよ!!」
「帰ってくるのが遅い。行くぞ」
スリッパを飛ばしたそいつこそが自称博士の変人だ。
いつもは引きこもり故にぼさぼさな髪型もある程度は整えられ、
普段から羽織っている白衣の下には今までその存在する理由がわからなかったスーツを着ている。
そして、存在すら知らなかった鞄を右手に持っている。
さきほどの言葉やその格好を見ればわかるように、外出するようである。
……え?外出?
俺の願いは天に届かなかったようだ。それが今、はっきりとした。
願った位置からまだ1mくらいしか移動していないにも関わらず。
―――自称博士と俺の豪快なチャオライフ―――
「行くぞ、ってどこにだよ」
もう何から何までわからない。
こいつは勢いで犯罪になるようなこともしかねない。
だから、とりあえず詳しく話を聞くのが先決なのである。
「決まっているだろ、チャオ研究所だ」
いや、決まっているだろと言われても普通に想像もつきませんそんなこと。
「チャオ研究所って、こんな時間に何をしに行くんだよ」
何度も言うようで悪いが、こいつと話す時は慎重にならなければならない。
変に彼の意見を否定した日には、明日が見えなくなる。本当に。
「全く、何も知らないのだな貴様は」
「知らないもなにも忙しいし、俺」
「はぁ、仕方がない。説明をしてやろう。お前の頭で理解できるかどうか心配だが」
きっとあなたの言う事は全人類が理解できません。
そう言ってやりたいが、言ったら俺の明日が消えてなくなるのは目に見えている。
だれか勇気のあるやつ、言ってやってください。
「新種のチャオ?」
「そう。カオスタイプ。ニュートラルカオスタイプはライトカオスと呼ぶらしい」
「で、そのカオス君がどうかしたのか?」
「不死身、小動物パーツがつかない、ポヨが光っている、無表情、繁殖しない。面白いチャオだ」
「普通、面白いじゃなくて凄いって言わないか、それ?」
「さ、とっとと行くぞ」
「いやいやいや待った待った。まだ重要なことがあるだろ」
俺が呼び止めると、やつは目を細める。しかも、明らかに嫌そうな顔で。
不満か。俺のせいで時間が過ぎていくことが不満か。それなら俺を憎むがいいさこのやろー。
「で、なんでチャオ研究所に行くんだよ?その理由を言っていただきたい」
「ライトカオスを解剖しに行く」
「すぐに解剖しようとするな!もっと安全というかなんというか、なごやかな手段はないのか!」
「そんなこと考える暇があったら行動だ」
「そんくらい考えろよ!」
「拒否する」
そう言ってやつは俺の腕を引っ張っていく。
あぁさらば、俺の睡眠時間。
おそらくこんにちは、牢屋。