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それは新語・流行語大賞に選出されたお笑い芸人のような存在であった。
最初は勢いが有りつつも途中で息切れし一気に勢いを無くしてしまった挙げ句、忘れられ、たまに思い出される存在という結果に落ち着いてしまう。
はたして本当に勢いがあったのかなかったのか。
そこには架空の勢いがあるだけで、人々はそれが本物の勢いであると勘違いしてしまっていたのかもしれない。
そのような人々はその程度の存在であり、その程度の使い切り感覚で扱われる可哀想と言えば可哀想な存在ではあるのだが、
こちらの博士と名乗るキャラの場合は特に何かを生産しているわけでもなければ収入は埃すらない全くの無である俗に言う夢追い人だとか働いたら負けと思っているような人の部類に入るので特に可哀想と思われるような存在でもない。
そのため、別に無理して覚えていようとする必要もなく、手軽である。
その手軽さが家事などに関することであったのならば人気商品になったであろうが、残念ながらその方向へのシフトは全く持って検討されていない。
要約すると、どうぞ忘れてくださいませ。というところである。
しかし、この博士と名乗るキャラは通常の人間と比べると延髄が非常に発達していた。
彼はこの苦しい世の中で勢いを保ち、なおかつ人気であり続け、
ゆくゆくは携帯小説にてパクられることすら期待しているのである。
彼は長考の末に、延髄を発達させることでそれに近づこうと試みたわけである。
そのために努力を惜しまなかったことは言うまでもないことであり、その努力は人間業ではない。
ただし例えパクられたとしてその小説が評価されることはおろか、パクられた事実が認知されることすら望めないのであるのだが。
そしてその博士と名乗る男は腰をくねくねさせながら前に歩き、突然星のようなものを散りばめた。
この星は画面の前からこの風景を見ているという非常に非現実的な存在にしか見ることができないものである。
つまりは存在しない。
見ることができるなんて奇特な人間が存在する可能性は0パーセントに限りなく近い。
しかし、その博士と名乗る男はその存在する確率が0パーセントに近い存在へ語りかけた。
博士「やあ!僕ちん博士君!チャオをこよなく愛する研究者だよ!」
きらり~ん☆ミ(←星のようなものが飛び散る音)
パシリ「キャラが違ってるぞお前」
博士は眼鏡をあげた。中指で。
博士「はて、なんのことやら」
そしてとぼけた。
俺は拳を握る。
しかし我慢をして会話を続ける。
暴力はよくない。(←教育的に)
パシリ「いくら勢いで進むのがモットーでもキャラが違うのはまずいんじゃないのか」
博士「そこで、だ。僕は天才だから案がある」
眼鏡が光る。
パシリ「天才な点はともかく案とはなんだ」
博士「……」
パシリ「……」
沈黙。
博士「……」
パシリ「あの……」
博士「……」
こいつ、自分のことをどれだけ高く評価しているんだ。
で、どうしようか。
このままだと確実に何も喋らない。
こいつをどうにかするには……
流石天才! →愛の告白
しねえよ。
ああ、もう、仕方がない。
パシリ「て、天才だからな!流石だよな!天才!ははは!天才!」
博士「そんなことはともかく、とっとと案の話に移るぞ」
パシリ「酷い人ですねあなた」
博士「さて、案だが……」
パシリ「おう」
数秒の間。
空気が固まる。
息をのむ。
その数秒がいやに長く感じた。
そして、やつの口が動く。