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チャオは最高のペットだ。
世間で、そうチャオは評価された。
可愛い上に、頭が良くて人間の言葉を喋れるようになる。
さらに頭の良いチャオは様々な事ができるようになる。
どの放送局も、一度はそのチャオについて特集する番組を放送したのである。
視聴率は中々高かったらしい。
今じゃ、ゴールデンタイムにチャオの番組をやったりもしているしな。

おそらくこのチャオがブームになることは既に予想されていたのだろう。
そして、テレビでの後押し。
その可愛い仕草や優れた知能があること、そしてキャプチャー能力や転生、進化といった不思議な力。
それらを紹介した後に、どのペットよりも優れた最高のペットと言われれば、そうだと思わないやつはいなかった。
結構テレビの言っている事って影響力あるんだよな、これが。
事実、チャオをペットとして見れば、まるでペットになるために生まれてきたかのようにすら感じられる。
きっとこうなる前もそんな感じの生き方だったんだろう。

チャオが発見されたのはそんなに最近の事ではない。
とはいえ、どの生物とも類似していないその生物をペットとして人間の世界に進出させることは容易なことではなかった。
キャプチャー能力が人間に対して使われないことを確認するだけで膨大な時間がかかったのである。
そりゃ、ペットにキャプチャーされましたってことになれば笑い事だ。
それだけじゃ済まされないかもしれない。
しかし、チャオの存在を知った者は早く飼えないものか、と待ち望んでいた。
日本人は小さいものを好む種族らしい。
時間と共にその人数は増え、チャオがペットとして一般人の手に届くようになる頃にはその人数がちょっとした活動ならば起こすことができるほどになっていた。
そのような状況であったから、チャオはペットショップで扱われるようになるのとほぼ同時にブームになった。
そして、ブームは人を誘う。
ブームというものは、ウィルスのようなものなのだ。
誰かが感染すれば、そのまま次から次へと広まっていく。
そうして、誰もがチャオを飼い始めた。
多くのチャオに関連したグッズやチャオをモチーフとした商品が販売され、たちまち世間はチャオだらけとなった。
街中では、チャオを連れて歩く人の姿がよく見られるようになり、特に都会では様々な所が次から次へとチャオに対するサービスに重点を置くようになった。
話題になることはいつもチャオのことだ。
どんな風に育てているか、どんな性格になっているか、など。
子供、学生、社会人、主婦など年齢層や所属に関係なく持ち出せる話題となっていた。
とりあえず友好関係を築くためにチャオの話をする、なんてことも少なくないらしい。
ここまで話題を探すのに苦労しない世の中になるとは、便利になったものだ。

当然金持ちは高級なチャオを飼い、それを自慢する。
金持ちの家とチャオを紹介する感じの企画をこの前テレビでやっていたが、凄かった。
派手な色のチャオと派手な色の家。
壁の色とチャオの色が一緒でチャオの影が一気に薄くなったりしていた。
派手な色のジャングルだ。
チャオは自分の身を守るために周りと同じ色をしているのである。
強盗対策なのだ。
……なんでやねん。

他にも、チャオを飼う際に優れた工夫をした者は周りから尊敬の目で見られるようになるのである。
中にはチャオにとても優れた芸を覚えさせて、テレビに出るようになった飼い主もいる。
もしかしたら、飼い主よりも芸達者なのかもしれない。
まあ、飼い主が同じ芸をしたところで飼い主側の人気が出ることはないだろう。
チャオの方が可愛いから。
可愛いものは強いのである。
だから、飼い主は人気になり得ない。
チャオの付属品だ。
チャオの方が稼ぐ。
飼い主は哀れだ。
でも、それは仕方の無いことなのだ。
……チャオの方が可愛いからな。(←二度目)

とまあそれらに限らず、チャオブームは流行の中でも様々な点から見て、極めて強烈なブームだったのである。
そのブームは、人々の暮らしにまで影響するような非常に影響の強いものとまでなっていた。
事実、俺はそのチャオを中心とした商売で生計を立てているわけで。
いやはや、それにしても。
ここまで成功するとは思わなかった。
チャオに関する物だけで商売をする、ペットショップならぬチャオショップを開こうとは結構前から考えていたが、しかしまあ一部のチャオ好きの方々がやってくるだけで生活は苦しくなるだろうと思っていたのだが。
ところがどっこい。
大繁盛である。
がっぽがっぽなのである。
おまけに若い女の子からも人気になりました。
店長って素晴らしい。
奥様方からも人気だ。
彼女らとは仲良くなっておいて損はないのだ。
噂話が店にいるだけで山ほど入ってくる。

・チャオのおかげで人気者になれました!(30代/男性)

という感じだ。
うむうむ。
人生とは何があるかわからない。
やっていて苦にならない仕事だしな。
とりあえずブームが去るまでは安泰だ。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第308号
ページ番号
1 / 5
この作品について
タイトル
いじめ
作者
スマッシュ
初回掲載
週刊チャオ第308号
最終掲載
週刊チャオ第310号
連載期間
約15日