01 -All of a Sudden-

「じゃあ、行ってくるちゃお」と、エミーチャオ。
ホテルのオーナーの「いってらっしゃい」を聞いて、満足そうに、ホテルを出ていきます。

それは、エミーチャオが外の街へと足を踏み出したそのときでした。

いきなり!何かの爆発音!
エミーチャオは腰を抜かしてしまいます。
同時に、砂埃。エミーチャオの右手に、何者かの姿が見えましたが、それも一瞬。
砂埃が辺りに広がり、エミーチャオは、思わず目をつぶります。


この出来事に、街は騒然としました。
車が急停車する音が、立て続けに起こります。通行人のざわめきも、エミーチャオの耳には届きます。
これは明らかに非常事態、どうするエミーチャオ!?
「逃げるが勝ちちゃお!!」

あわてて逃げようとしたそのとき、エミーチャオの腕を、背後から何者かが掴みました。
振り返ったエミーチャオは、その顔を見て恐ろしくなります。

体の大きさからみれば、相手もチャオです。しかし、今まで見たこともないような姿なのです。
色は、黒と灰色の縞模様に、ジュエル特有の光沢。体の各部は異様に変形し、そして
最も不気味だったのは、そのポヨが、死んだように真っ黒だったことでした。

「ひ、ひひゃー!」
エミーチャオは絶叫し、あわててその腕をふりほどきます。周りの人々には目もくれず、
一目散に、歩道を行った先の駅をめがけて走ります。

しかし、その黒いポヨの奴、驚くべき速さを持っていました。
車道を横切って飛んで、エミーチャオをも追い抜いて、駅の入り口へ先回り。
黒ポヨは着地すると、その長く変形した腕を思い切りのばして、エミーチャオにパンチを仕掛けます。

エミーチャオは、敵のあまりの速さに、驚いて転んでしまいました。
危機一髪、倒れた体のすぐ上の空気を、黒ポヨの腕は切り裂きます。
鋭く尖った風の感覚は、エミーチャオの肌に鳥肌を立たせます。

エミーチャオはとっさに、転んだ姿勢のまま横に転がって、黒ポヨの足もとをすくいました。
黒ポヨはよろけます。そのとき出来た隙を元に、エミーチャオは駅へと駆け込みます。
そして、そのまま一気にプラットホームまでの階段を飛んで越えていきます。

黒ポヨもエミーチャオを追って、駅へと入ってきました。
エミーチャオを見つけると、羽ばたいて、飛び上がり、とてつもない速さで、エミーチャオに接近してきます。

ラッシュアワーはとっくに過ぎた駅の庁舎内、人はほとんどいません。
そこでエミーチャオは、駅員を頼りました。プラットホームに立っている駅員の顔に、飛びつきます。

Zzzパチン!
居眠り駅員、起床!!
エミーチャオと不気味な黒ポヨチャオを見て、駅員が取った対処は一つ!!
「ヒャクトーバン!!」

しかしそこにはもう、黒ポヨが迫ってきていました。電話が出来ません。
何を思ったか、駅員。突然エミーチャオを顔から掴み取ると、黒ポヨに向かって投げつけました。
黒ポヨは予想外の反撃をうまく避けることが出来ず、プラットホームへの階段の途中に不時着します。
階下には、ぽよんと弾んで無傷のエミーチャオ。

駅員はこの間に携帯を取りだし、素早く通報します。
黒ポヨ、それを見て、一瞬躊躇を見せたものの、標的は変えませんでした。
羽ばたいて飛び上がると、エミーチャオに向かって、急降下を仕掛けます。

あわてて、横に飛び退いて、よけるエミーチャオ。
しかしそのときの風圧といえば、ただ者ではありません。
それを感じたエミーチャオ、冷や汗を流します。到底敵う相手ではないことを悟ったのです。

黒ポヨは床に降り立つと、エミーチャオを睨み据えました。

と、そのタイミングで、わらわらとGUNの兵士達が駅内に駆け込んできました。
意外な早さです。もしかすると、町の人が、既に通報していたのかもしれません。
瞬く間に黒ポヨを包囲し、一斉に銃を向けます。

黒ポヨは観念?いや、違います。駅のカジノポリス出口へ向かって駆け出すと、そのまま走って逃げていきます。
追うGUN。出口を出た黒ポヨは右へ曲がりました。運よくも、その先は行き止まりのはずです。
しかし――

駅の外で、彼らが見たものは、建物の壁をよじ登り、逃げてゆく黒ポヨの姿でした。
GUNも駅員もエミーチャオも、その姿を、為す術もなく見続けるばかりでした。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第269号
ページ番号
2 / 19
この作品について
タイトル
矛と盾の間で
作者
チャピル
初回掲載
週刊チャオ第269号