1話

 俺は相手に銃を向けて引き金を引く。
 理由は俺達「GUN」は平和を守るためにここにいて、相手はその平和を壊すためにここにいるから。まるでどっかのゲームくらい単純だ。
 俺の撃った銃弾はカキンという音と共に弾かれる。相手の体はまるで何事もなかったかのよう。
 それもそのはず。俺達の相手はロボットの大群だからだ。人型のロボットの大群は遠くから見れば俺達と対して変わらない。
 だが、決定的な違いがある。それは人間とロボットでは硬さが違うことだ。
 俺達に持たされた唯一の武器である鉄の弾を放つ道具では、人間は壊れるがロボットは壊せない。
 そして、相手の持っている銃は俺達の防具の許容範囲である鉄の弾を放たない。
 カオスドライブ。カオスエメラルドを基として作られたエネルギー発生装置。
 それらが発するエネルギーを放つ武器。やつらはそれを持っている。
 一昔前までは俺達の防具でも防げる程度だった。だが科学の進歩は恐ろしいもので、今では防具をたやすく貫くほどの威力になっている。
 GUNというくらいだ。バズーカ砲だとかカオスドライブのエネルギーを発射する銃だとか、強力な武器はある。
 だが、そのような強力な武器は全て機械兵士に配給されてしまう。人間にも配給するほど余るなんてことは滅多にない。
 弱い人間には弱い武器がお似合いというわけだ。笑えない。

「危ない!」
 横にいた兵士が走り出す。彼の向かう方向にあるビルとビルの間に人がいた。
 子供と、その母親がそこにいた。たぶん戦闘がある所から裏道を通って逃げてきたのだろう。
 だが、敵は街を覆い尽くすかのように大量にいる。その証拠に、彼女達が逃げてきたこっちにも敵はいるのだから。
 そして、いくつかのロボットがその二人に気付き、銃の標準を彼女らに定めた。
「うわああああ!!」
 走っていった兵士は逃げてきた彼女達を庇うように立ちながら鉄の塊を乱射する。
 弾は敵の体を貫かない。わかりきっていることだ。
 だが彼はその無駄な行動をやめない。
 もしも、撃ち続けた結果、あいつらを倒せたら。
 そんなただの希望でしかないIfのために彼は撃ち続ける。そのIfが現実にならないと、生きる事はできないだろうから。
 そして彼の銃から弾が無くなった途端、まるで相手はそれまで待っていたかのように彼を集中攻撃し始めた。
 彼の体は一瞬のうちに穴だらけになる。さっきまで聞こえた彼の叫び声は聞こえなくなった。
 相手の銃撃の音が原因か、それとも彼の体がそれをすることができない状況になったのか。おそらく両方だ。
 しばらくは地面につかなかった体がどさっと力無く崩れる。
 その後ろにいた、彼を盾にしていたはずの二人も既に動かなくなっていた。

 真横で、変な方向に銃を向けて発砲しているやつがいた。
 それは、前を向いているのにそのことがわかるほどで、ちらりと見てみるとその手はかなり震えていた。
「おいおい、よく狙え…」
 俺が呆れながらそう言っている途中、彼は崩れるように倒れた。
 彼の胸には穴が開いていた。
 さっきまでこの状態で戦っていたのだろうか。
 誰も彼をどうにもしようとしない。そもそも、誰も彼をどうにかしようとはしなかった。
 他の人をかばっている余裕なんてない。その次が、自分かもしれないから。

 死んでいるのは少数じゃない。
 今この瞬間だって敵の攻撃によって死んでいる人がいる。俺が今立っていることが奇跡だと思うほど、たくさん。
 俺達のように死ぬかもしれないということがわかっていて死んでいく人もいれば、何もわからないうちに死んでしまった人だっているはずだ。
 基準なんてない。サイコロを振って1が出たら生きていられる、というのと同じように運任せだ。
 その時、誰かの攻撃が当たるか当たらないか。それだけで生か死かが決まる。
 そんなだから、ここに立っているともう生きていることも死んでいることも大差がないように思えてくる。
 俺だって、既に死んでいると言ったって過言じゃないくらいだ。
 むしろ俺は本当に生きているのか?そうふと思ってしまう。生きているなんて気がしなかった。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第249号&チャオ生誕8周年記念号
ページ番号
1 / 12
この作品について
タイトル
ヒーロー・ガーデン
作者
スマッシュ
初回掲載
週刊チャオ第249号&チャオ生誕8周年記念号
最終掲載
週刊チャオ第255号
連載期間
約1ヵ月12日