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歩くことにすら、多大な努力を強いられる体では、まともにチャオたちの世話をすることはできなかった。
できるだけのことはしたんだけれども、やっぱり充分ではなかった。
あれから、2人のチャオが、また灰色のマユに包まれてしまった。
チャオたちには、かわいそうなことをしてしまったと思う。
でも、悲しくはなかった。
すぐに、私もあのコたちのところへ行くんだから。
最後に残った1人のチャオ。
このコが灰色のマユに包まれた時、きっと私も・・・。
その時が近いことは、このチャオの様子を見ていればよく分かる。
以前にくらべて、かなり元気がなくなっているから。
今日か、明日か。
いえ、そんなことを考える必要なんてないわね。
ただ待っていればいいだけなんだから。
気配を感じて、振り向くと、チャオが静かにマユに包まれ始めていた。
いよいよ、最期の時が来た。
チャオたちに見守られながら最期を迎えたい、そう思ったこともあった。
でも、逆に、私の愛したチャオたち、みんなを見送ることができて良かったと思う。
これで、思い残すことがなくなったから。
チャオたちと過ごした楽しい日々を思い出すと、自然に涙があふれてきた。
はは・・・、私は、まだ泣けるんだ。
ちょっと意外だった。
気が付くと、チャオを包んでいたマユが、かなり薄くなっていた。
このマユが消えると、そこには何もない虚ろな空間ができるんだわ。
私の心のように・・・。
?
何?
おかしい。
そんなはずはないわ。
マユは完全に消え去った。
そこには、もう何もないはずなのに。
なぜ?
何かがそこにある。
それは・・・。
た・ま・ご?
卵。
そう、間違えようがないわ。
チャオの卵。
確かにそこにあるのは、チャオの卵だ。
それが意味するものとは。
転生。
どうして?
私は、あなたに辛い思いしかさせなかったはずなのに・・・。
何も考えられなかった。
なのに、そうするのが自然なように、私はチャオの卵を抱きしめていた。
どれだけの時が過ぎただろう。
微かに震えたかと思うと、卵が割れ、チャオが生まれた。
このチャオの目を見た時、私には分かった。
このコは、自分自身のために転生したんじゃない。
このコは、私のために転生してくれたんだ。
このコは、転生を望むほど、楽しい生を過ごしてきたわけじゃない。
でも、それ以上に、私をほっておけなかったんだわ。
また、辛い思いをするかもしれないのに・・・。
でも、もう二度と、そんな思いはさせないから。
大丈夫。
私は強く生きる。
あなたのために、いえ、私自身のために。
大丈夫。
そして、
ありがとう。
今は、それしか言えない。
でも、
私は、もう大丈夫。
‐‐完‐‐