『酒は力なり』1
彼女は守るために存在している
守るべき時、月の光はいつでも彼女を照らしていた
そして、彼女はこう呼ばれた・・・・・
『月光のメイド』
第四話「酒は力なり」
季節は夏。8月である。
ここはチャオの森。
人に捨てられたりしてくる、チャオの国でもあった。
そのチャオの森は、チャオが作った街、平原、火山など人間にとっても広い森であった。
そのチャオの森の『チャオティックルーイン』という街の北の森の奥に、一つの大きな屋敷があった。
人間が住めるような広さの屋敷で、庭も相当広い
その屋敷の一階にある浴場があった。
浴場の中はとても広く、天然の温泉が存在していた。
この屋敷は一見洋式見える屋敷だが、和式と洋式が混ざっている屋敷になっているという、おかしな構造であるため、こうなっているのだろう。
その浴場に一人のHSS型のチャオが温泉の中に気持ちよさそうに入っていた。
???「あ~、生き返る~。」
そう言った時に、誰かが浴場に入ってきた。
???「ジェイドさんがいるようですね。」
HSS型チャオはジェイドというらしい。
浴場に入ってきたチャオはノーマルチャオ(NNN)ともう一人。
???「誰が浴室に入っていいっていったのよ。」
ジェイド「メルトさんがいいって言った。フィルもいたのか。」
HFF型のチャオ・・・この屋敷のお嬢様のフィルが浴場に入ってきた。ノーマルチャオの方はメルトというらしい。
フィル「メルト・・・あんた勝手に・・・。」
メルト「別にかまわないと思いましたものですから・・・。」
フィルはため息をついた。
フィル「・・・まぁ、いいわ。私も入るわよ。」
ジェイド「おう。ちなみにここは浴室じゃなくて、浴場だ。こんな広い浴室があるか。」
フィル「あらそうなの。次からは気をつけるわ。」
珍しくなにも言ってこなかったな・・・。
そう思っていたら、ある事にジェイドは気がついた。
ジェイド「さすがにメルトさんもここまでメイド服を着ないようですね。」
メルト「当たり前です。濡れてしまっては元も子もありませんし。」
メルトさんは、変わっているチャオだ。
チャオは服を着ないのが普通であるが、メルトさんは普段からメイド服を着ている。
理由は未だによく分からない。
フィル「服を着て風呂に入る馬鹿がどこにいる。」
ジェイド「まぁ、そうだけどな。」
メルト「人間も服は脱いで入るようです・・・ちなみに男と女は別々に入るとか。」
ジェイド「へぇ~。」
チャオには男女は存在しない。
チャオに男女が存在するならば、精神から異なる場合にそうなるのであろう。
実際に、ジェイドはチャオからすると男であり、フィルは女となっている。
しかしチャオは普段から裸のため、チャオ同士は違和感をまったく感じない・・・それがチャオの世界である。
フィル「何故別々に入るのかしら?」
メルト「そこまでは分かりません・・・人間だけという話もありますが。」
ジェイド「まぁ、人間にもいろいろあるんだろうな。」
そう言って、俺達はゆったり風呂に浸かっていた。
普段は厳しい顔をしているフィルも、顔が気持ちよさそうだった。
フィルのポヨもハートに変わっていた。
普段からそんな顔すればこちら側も気が楽になるのになぁ・・・。
そう思っていたら、フィルの顔はいつもの表情に戻り、ジェイドに向かってこう言った。
フィル「今日の夜に、月見をするらしいわよ。」
ジェイド「月見?またなんで今日に・・・。」
フィル「さぁ?ヴァンの提案らしいわよ。」
ヴァンとは、NPP型の酔っ払いのチャオである。この屋敷の住人ではない。
ちなみにジェイドもこの屋敷の住人ではない。
メルト「今日は8月15日・・・昔のこよみで十五夜の満月の日らしいです。」
ジェイド「へぇ~。どこからの言い伝えですか?」
メルト「日本という国の言い伝えらしいです。」
日本か・・・。行った事ないから分からないな。
そう思っているとフィルがこんな事を言った。
フィル「そもそも、チャオの森ってどこに存在するのかしらね?」
メルト「そこまでは分かりませんね・・・。」
ジェイド「噂によると、日本だとか言われているけどな・・・俺にも分からない。」
チャオの森はどこに存在しているのか・・・それはチャオにもよく分からない。
チャオの森を抜けると都会・・・たくさんの人間が存在するとも言われていたり、海が存在すると言われていたりと、いろんなチャオからささやき始められている。
そして、チャオの森が一つかどうかも分からない。
ジェイド達の住むチャオの森は、チャオの森を抜けたチャオや、チャオの森にくるチャオが日本人だという噂をするため、日本ではないかと言われている。
フィル「まぁ、この屋敷は和式と洋式が混ざっているから、どちらでもいいって感じね。」
ジェイド「そういう問題かよ・・・。」
フィル「まぁ、とにかく。今日の夜あんた暇?」
と言われてもなぁ・・・チャオが忙しいときって遊ぶ以外もなにもないからな。
ジェイド「一度親に話してくれば、すぐにいいと思うけどな。別にいいぜ。」
フィル「じゃあ、決まりね。夜に屋敷にきなさい。」
フィルは風呂から立ち上がった。
フィル「私、先にあがるわね。」
メルト「分かりましたお嬢様。」
そう言うと、浴場から出て行った。
ジェイド「ふぅ・・・あいつ楽しそうだな。」
メルト「あなたのお陰だと思いますけどね。」
ジェイド「・・・そんなに俺は気に入られてるわけ?」
メルト「はい。いい遊び相手だとか。」
その割には、いつもいぢられてばかりであるのだがなぁ・・・。
ジェイド「メルトさんは何故この屋敷に来たのですか?」
すると、メルトさんは少し黙ってからこう答えた。
メルト「・・・お嬢様の父から、雇われの身であります。」
ジェイド「へぇ・・・。」
メルト「最近は父からの連絡も途絶えて、給料はもらっていませんが・・・。」
?
給料をもらっていないのに屋敷で働いているのか?
ジェイド「給料をもらっていないのに、どうしてこの屋敷で働いているのですか?」
メルト「元々ここで住まわせてもらっていますし、料理の方も結局は無料でいただいてますし、それになにより・・・・・。」
そう言うとメルトさんは立ち上がって、俺に背を向けた。
ジェイド「それに・・・・・なんですか?」
メルト「・・・お嬢様は、私のもっとも大切な人です。」
そうメルトさんは答えた。
メルト「だから、私はお嬢様を守らなければならないのです。」
ジェイド「・・・・・そうなんですか。」
詳しく追求しようとしたが、やめた。
きっといつか分かる日が来るだろう。
そう言って、俺達は風呂から上がることにした。
天然の水はやはり気持ちが良かった。