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クレア「・・・着いたね」
プンプン「ここに来るのは初めてだな」
ニコニコ「・・・うん・・・・・・」

南の森。
その最北端。
森の、入り口。

チャオガーデンから来たメーデは勿論のこと、東とはいえ元々森に住んでいたクレア達も、南の森に来るのは初めてでした。
メーデ「・・なに、ここ・・・・・・」

そこは、危機に直面していました。
チャオ達にとっての、大変な危機が。
住む場所が、奪われようとしていたのです。

周りの木は無残になぎ倒され、地面はあちこちに大きな穴が空いています。
そして、そこら中に見えるのは、硬い金属のフェンスと、チャオ達には余りにも大きな、ショベルカー。
ここは、人間の手によって破壊されつつあったのです。


ニコニコ「酷い・・・」
プンプン「これじゃあ、ここの奴らが生きていけないじゃねぇか」
話に聞いていたよりもずっと、この場所の破壊活動は進んでいました。

こんなに木が少なかった?
こんなに大地は危険な場所だった?
こんなところに金属なんて存在していた?

こんなにも、森が森で無くなっていた?


と、思考を巡らせている内に、プンプンはあることに気づきました。
ここに住んでいるはずのチャオ達が、全く見当たらないということです。
そればかりか、木には実がひとつもなっていませんでした。
あるのは、壊された森と、人の居た跡だけ。
プンプンは周りをよく見ました。
やはり、誰もいません。
プンプン「・・・・・・」
食べ物を探しに何処かへ出かけているのであれば問題はありません。
でも、もしそうでなかったとしたら、大変なことになっている可能性もあります。

プンプン「なぁ、お前らここの奴等の顔見たことあるよな?」
ニコニコ「うん、あるけど?」
クレア「時々東に来てたし、あるよ」
プンプン「あいつら何処行った?」
ニコニコ「え・・・」
ニコニコとクレアはプンプンの言いたい事をすぐに理解しました。
メーデも、南の森にいるチャオ達の顔は分からないけれど、何を言いたいのかは分かりました。

メーデ「・・・ねぇ、探しに行きましょうよ」
ひょっとしたら見つかることもあるかもしれません。
4人は、ぐっと頷いて森の奥へと進んでいきました。



北の森から中央へ向かう道。

アイラ「・・・はぁっ、雨…すごい・・・」
アイラは、アイリス達の待っている所まで一直線に飛んでいました。
しかし、雨は彼女のことなど気にもかけずに勢いを増していきます。
タオルで拭いた体は、またすぐにびしょ濡れになり、体は冷え切ってしまいました。

アイラ「…でも、ちょっとでも役に立ちたい」
その思いで、アイラはどんどん急ぎます。



リサナ達がアイラの帰りを心配して待っていると、遠くに影が見えました。
リサナ「あ、あれ、アイラじゃない?」

ものすごい勢いで、アイラは彼女達の所に突っ込んできました。
ウォーター「うぐぇっ!?」
アイラ「はわっ!?…あ、ごめんなさい!」
スピードを出しすぎて止まれなくなってしまった為、直線コース上にいたウォーターに激突してしまいました。
アイラは、何度も頭を下げて謝ります。
ウォーター「え…あ、いや、大丈夫だって」
アイラ「…本当ですか?どこか痛いところはないですか??」
ウォーター「大丈夫、気にするなって」
本当は、ぶつかったところは多少痛みますが、
ウォーター(んなこと言うわけないって)
その返事にほっとしたのか、アイラは表情を和らげて言いました。
アイラ「じゃあ、よかったです。これからは気をつけます」
最後に、ぺこりと頭を下げて、顔を上げた時に、アイリスから声をかけられました。

アイリス「びしょ濡れだけど、大丈夫??体冷えてない?」
そういって、アイリスはアイラの手を握りました。
アイリス「やっぱり冷えてる…どうしよう、何か拭くもの無いかな」
辺りを見回しても、体を拭けそうなものはありません。
どうしようかとアイリスが考えていると、さっきまでずっと聞こえていた音が、だんだんと弱くなってきているのに気がつきました。

アイリス「あ、雨…止んできてるんだ」

雲も少しずつ消えていき、間から太陽の光が注ぎ始めています。
気がつけば、粒が地面を叩く音はすっかり消え、かわりに鳥の鳴き声が聞こえてきました。
周りの木々は、残った雨粒に日光が反射してきらきらと光っています。
さっきとはまるで別世界のような景色に、皆はしばらく気をとられてしまいました。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第310号
ページ番号
32 / 33
この作品について
タイトル
ガーデンのヒミツ
作者
神崎揚羽(紅黒梓)
初回掲載
週刊チャオ第266号
最終掲載
週刊チャオ第312号
連載期間
約10ヵ月19日