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アイラは北の集落へ向かって直進していました。
周りの景色は飛ぶように変わっていきます。
アイラ「早く戻らないと……」
ポツ…
ポツ……ポツ…
アイラ「…え?……雨…??」
そう呟く内にも、地面には小さな斑点が数を増していきます。
ポツン…ポツ…ポツポツ……
ザァァァァァァァァ……
いつの間にか、空は一面の黒雲に覆われていました。
アイラ「嘘……い、急がないと!」
アイラは風を切って前へ進んでいきます。
ザァァァァァァァァ……
アイリス「え?…何??」
急に降ってきた雨に、アイリスは戸惑っていました。
リサナ「結構激しいわねぇ……」
ゼード「ほら、こっちで雨宿りするぞ」
皆は近くにあった大きな木の下に集まりました。
アイリス「そっかー…雨降るんだね」
ウォーター「あぁそっか。チャオガーデンには雨は無いんだって?」
そういえばフレイヤも同じ様な反応をしていた気がする。ウォーターはそんな事を思っていました。
アイリス「うん、そうなの。だから『雨』って初めて経験したかも…。何か水が歌ってるみたいで、楽しい」
ウォーター「歌…?」
アイリス「そ、歌。何か可愛いよね」
そう言って、アイリスは歌を歌いだしました。
高い音程の、優しいメロディー。
彼女達の周りに、静かで優しい空間が出来上がっていました。
リサナ「へぇ…綺麗な歌だね」
ゼード「何か子守唄みたいで眠くなってきたぜ…」
二人は目を閉じ、黙ってアイリスの歌を聴きました。
ウォーター『…か……可愛い…』
ウォーターだけは、心地よく歌っているアイリスの横顔を、じっと見つめていました。
少し雨音が強くなったと思うのは、気のせいでしょうか。
アイラ「はぁ…着いた……」
アイラは、北の集落へたどり着きました。
既に体はびしょ濡れです。
イクス「あ、アイラ?お帰りー…って大丈夫か?」
アイラが濡れているのを見たイクスは、タオルをとってきてアイラに渡しました。
アイラ「あ、ありがとう」
それを受け取り、アイラは自分の頭を拭き始めました。
アイラ「…よしっ」
水分をふき取ったアイラは、タオルをイクスに返しました。
アイラ「ありがと、ちょっと出かけてくるね」
イクス「え?この雨の中を??何で?」
アイラ「ちょっとね。それじゃあ、ゼードさんとリサナさんも帰るの遅くなるって伝えておいて!」
そして、アイラはまた飛んでいってしまいました。
イクス「おいおい…何しに行くんだよ……」