風想 ~I'm in love?(リメイク版)

道の真ん中で止まるのは迷惑だから、
どんなに拒否反応を起こす街道でも車を進め続ける。

何となく昔と変わっていて、
何となく昔のままのようなそんな道。
そこを車で進むのは何とも微妙な気持ちになる。



ずっと前の話。

俺はここの道を自転車で君を乗せて、
なんかいろいろと…もう、覚えてもいない、
他愛もない話でいつも盛り上がっていた。



その少し後の話。

俺は一人で自転車をこいで、頭の中にあるのは、
「ごめんなさい」
という、君の言葉だけだった。

俺は往生際が悪いから…。なんて心で言い訳して、
そこで君にぶつけた俺の言葉。
「どっかいっちまえ。」
でも、ガキだとあしらうこともなく、
彼女はそれを聞くと「ゴメン」とまた言って、暗闇に消えた。



それからまた少し後の話。

君は病院でもう二度と目覚めなかった。
さよなら。
あなたはもう俺の前に来ることはないさ。

俺は、以前君に言われた言葉を言い返した。
「ごめんな…。」

あのとき俺にあの言葉を言ったとき、
彼女は頭の中で何を考えていたのだろう?

何でホントのこと言わなかったんだろうか。
そんなことされても、
残された人間はつらいだけなのに…。

残るのは後悔だけ。…後悔だけなのに。



それからずっと後の話。

俺は一匹のチャオを飼った。
まぁ、安物さ。そこら辺は勘弁してくれ。

ただ、安物でも、俺は愛を注ぎ込んだ。
彼女かって世界にとっては安物だったかもしれない。
でも生きている限りはpriceless…。
チャオかって、彼女かって、
俺にとっては宝物だったのだろう?

そうして、チャオはぐんぐん成長した。
進化すると彼はヒーローチャオとなった。



それからまた少し後の話。

チャオは条件を満たしたので進化した。
それは半永久的な生存が可能な「ヒーローカオス」。
俺はうれしくてチャオを抱き上げた。

でも

少しだけ悲しかった。

チャオと君が対照的になっていて、
チャオを思い出せば君も思い出されて。



そして、少し後に進んで、今、車の中。

俺は決心したよ。
この町に戻って来ると言うことを。

君は死んで、もう「夢」なのかもしれない。
いや、あるいは意識無きただの物体になっているのかもしれない。
でも、それでも俺は君がいることを信じているから。
この世界のどこかで。

それくらい、信じていいだろう?

恋心ではない、よりどころでもない。
そんな特別なところに君とこのチャオはいる。



そして、もう一個あることをすることに決めた。



今、そこに行くから。



スピードを上げる。
頃合を測って、センターラインを飛び出す。

対向車線には,大型トラック。



今、そこに行くから。



刹那、俺に当たっていた風は止まった。

そして、

意識は風に流された。

fin

この作品について
タイトル
風想 ~I'm in love?(リメイク版)
作者
それがし(某,緑茶オ,りょーちゃ)
初回掲載
週刊チャオ第327号