【5】

目が開く。
銃声が鳴り響いている。
ぼんやりとしていた視界が完全に見えるようになった。
僕の体はまだ人間のようだ。
体の色が肌色だ。指も五本あるし、鼻もある。

部屋の中は炎上していて、数え切れないほどの機械のチャオがいる。
そして、赤く染まった元々人間だった物が二つ見える。
それらに僕は近づく。

みんな、酷い。
みんな、僕に最期を見せないで勝手に死んでいく。
もう、僕一人だ。

右手の平に力を込める。すると、緑色の石、カオスエメラルドがどこかから一瞬のうちに右手にワープしてきた。
それを、握りしめる。
カオスエメラルドは激しく光り、その光に僕は包まれる。
カチッ。
時計の秒針が一目盛り動く。
その間に数十体の機械のチャオが壊れた。
カ……………チ……………。
カオスエメラルドの力なんだろう。
僕の体は青っぽく少し透けている。
体の形も少し変わったようだ。
さきほどまであったカオスエメラルドは体内に吸収されたのか、見あたらない。
パソコンのモニターに映った自分の顔はまさしくカオスと呼ばれる生物だった。
そして、時間の流れがとてもゆっくりだ。
自分以外の物体がとても遅い。
無抵抗な機械達に攻撃を加える。
カチッ。
合計、三回秒針が動いた。
全ての機械のチャオは機能を停止させた。
僕の体は元の人間の姿に戻る。
手にはカオスの体になっていた時には無かったカオスエメラルドが握られている。

僕は、研究所から出る。
しばらく歩いてから振り返り、改めて研究所が燃えていることを理解する。


何が正義で、何が悪か。
そんなこと、わからない。
もし、僕が機械達を倒す事が悪だったとしても僕はその悪の道を貫き通す。
僕こそが死んでいった仲間達の最期の希望。彼らにとっての正義。
きっと僕が死ぬまでに最初のチャオがチャオカラテやチャオレースをする時代に戻すことはできないだろう。
でも、僕がいる限り機械達の好き勝手にはさせない。全ての行動は僕に対する無駄な抵抗だ。
僕は呟く。全ての者に向けて。
「Don't try to be a hero」

このページについて
掲載号
週刊チャオ第206号
ページ番号
5 / 5
この作品について
タイトル
Don't try to be a hero
作者
スマッシュ
初回掲載
週刊チャオ第206号