第一話 髑髏と甘党と・・・
冥界・・・
一般的には死者が降り立つ地というイメージが強い。
しかしそれは人間界での勝手なイメージだ。
実際は死に関わる者の集まりだろう。
しかし冥界は荒れ果てているという空想はあながちまちがってはいない。
空は人間界で見えるような青空ではなく、灰色の空。
大地もほとんど痩せこけていて、採れる作物もわずか。
そんなやせこけた大地を見下ろすように建てられた塔がある。
その塔の周りには常に蝙蝠(こうもり)が飛び回り不気味な雰囲気を更に倍増させている。
その塔はこう呼ばれている・・・
【グリムの塔】と・・・
グリムの塔1F
血のように紅い絨毯がしかれた廊下。黄土色の煉瓦が集まってできた壁。
その廊下を一人、孤独に歩いている者がいた。
髑髏の仮面をつけ、漆黒の翼を背に生やし、小柄な体に似合わぬ巨大な鎌を背負っている。
髑髏の仮面の奥からは真紅に輝く目が見える。
これらの外見から【紅眼の髑髏】という異名がある。
彼は任務を終えて今帰ってきたらしく自室へと急いでいるらしい。
「Trick or Treat~?」
【紅眼の髑髏】の背後から急に聞こえたこの言葉。
【お菓子をくれなきゃいたずらするぞ】という意味だ。
――こんな事を言う奴はただ一人・・・
「あいにくだが今日、飴は持って無い。」
まるで機械の様に淡々と発した。
「ちぇ、期待外れだな~こりゃ」
飴一つで本気で落胆するこいつの名前は・・・ステック。
性格は軽くそして異常な程の甘党。
半年程前からの付き合いだがこいつに対して幾度も怒りの感情を覚えた。
それなのに勘にさわる性格も言動も変えようとせず俺に接してくる・・・
「ところで人間界に降り立ったのって仕事?」
「仕事以外で行く気にはならない」
「行くとこあるだろ!特にラスベガスとかもう最っ高!!」
「仕事そっちのけだな・・・」
「息抜き程度っつ~やつさ」
「の割には随分と損したらしいがな」
「うっ・・・・」
どうやら図星らしく開きっぱなしの口が急に閉じた。
まぁこれで少しは自重するか・・・
ステックから視線を外し、前を向いて歩き出した。
「あぁ~そうそう!」
こいつは黙る事を知らないのか・・・?
やや舌打ち気味にふりかえると同時に紙きれを髑髏の仮面におしつける
髑髏は紙きれを手に取ると内容を一通り黙読した後に紙を捨てた
一通り読み終えた髑髏に対しステックが補足する。
「相手が【天兵団】なら不足無しだろ?」
「報酬は?」
「【鮮血ワイン】を2、3本ってのは?」
「いいだろう」