チャオの日記帳
八月十四日(木)
アイス君からお絵かきを教わった。字の読み書きも教わったので、今日から日記をつけたいと思う。
八月十五日(金)
アイス君は特別なチャオだ。走るのも速くて、泳ぐのも速い。飛ぶことも上手だ。ぼくらが住むチャオガーデンで、アイス君に勝てる子はいない。カラテが得意だって自慢しているファイア君ですら、アイス君とは絶対に遊ぼうとしない。ご主人も、そんな「できる子」のアイス君を特に可愛がっている。栄養がたくさんある木の実やカオスドライブはアイス君が独占しているようなものだ。ご主人からもらえるものはないので、アイス君がいらなくなったものが、ぼくの唯一の食べ物だ。
八月十六日(土)
ご主人がやってきて、アイス君にカオスドライブをたくさんあげた。もう飲み干せないよ、と言って、アイス君の余りをファイア君とウインド君で分け合っていた。
八月十七日(日)
今日アイス君と話したこと。
やあ、また何ももらえなかったのかい。
そっか。まあー、ぼくと比べたら、きみ、やっすいピュアチャオだもんね。
きみも、ツヤツヤチャオやジュエルチャオだったら、よくしてもらえたかもねえ。
八月十八日(月)
歩く練習を始めた。一日頑張ったので、だいぶうまくなった。アイス君はやらない方がいいと気を遣ってくれたけど、大丈夫。ぼくは特別じゃないから、頑張らないと。
八月十九日(火)
ご主人がアイス君に小動物とチャオの実をあげた。小動物はアイス君に耳をつけて、消えてしまった。どうして消えてしまったのだろう。
八月二十日(水)
歩く練習の成果が出てきた。安定して歩けるようになってきたので、明日のチャオレースに参加させてもらえることになった。ご主人は困った顔をしていたけど、大丈夫。明日は頑張ろう。
八月二十一日(木)
今日はチャオレースをした。ようやく歩けるようになったばかりのぼくは、全部負けてしまった。アイス君やファイア君は、ほとんどのレースで一番をとっていて、すごいなあと思った。
アイス君は、ぼくを慰めてくれたけど、ぼくの気分は晴れなかった。ご主人は頑張ったアイス君とファイア君にご褒美のチャオの実をあげた。ぼくも頑張らないと。
八月二十二日(金)
アイス君からチャオの実をもらった。ちょっと量が少なかったけど、ぼくは元々そんなに食べる方じゃないから、大丈夫。
ウインド君を最近見ない。どこへ行ってしまったのだろう。とても心配だ。
八月二十三日(土)
ご主人が来た。アイス君に小動物とカオスドライブをあげた。もっと頑張らないと。
八月二十四日(日)
ご主人が落として行った本を拾った。ぼくたちは、小動物をキャプチャ、吸収できるみたいだ。だから消えてしまったのだ。チャオの実や小動物は、ぼくたちの走りを速くしたり、泳ぎを上手にしたりする効能があるようだ。
八月二十五日(月)
走るのが速くならない。
頑張るだけではダメなのかも。
チャオの実や小動物が必要だ。
八月二十六日(火)
どうしてぼくにはチャオの実や小動物がもらえないのだろう。
八月二十七日(水)
ご主人が来た。チャオの実や小動物をアイス君に与えた。ぼくはアイス君から余ったものをもらおうとしたが、今回は余らなかったみたいだ。
八月二十八日(木)
チャオレースで勝てない。
八月二十九日(金)
頑張っても走りが速くなるわけじゃない。チャオの実や小動物が欲しい。でも、ご主人はくれない。どうすればもらえるのか、考え中。
八月三十日(土)
ファイア君が小動物をたくさんもらっていた。ぼくには何もくれない。頑張っているのに。
九月三日(水)
良いことを思いついた。
九月十五日(月)
ようやく状況を呑み込むことができた。この日記を見つけた時は自分の愚かさに目を瞑りたくなったものだが、しかし悔やんでいても仕方がない。今はこの状況から脱け出す方法を探す。
あの子はどこへ行ってしまったのだろうか。アイスやファイアはお腹を空かせて機嫌を損ねている。転生も近いと言うのに、これでは……。