Data−Remains.4
「僕が犯人の振りをして、C−5に僕を追わせる―」
人間とは思えない、最早人間では無い冷凍光線に目を凝らし、エムは何とか避けていた。
「僕を追えば、必ず某に辿り着く。だが、君らが捜査の手を某に明かしてくれたお陰で、僕が裏で手を回したのだと疑われた―」
少し耳が痛いエムだったが、反論している余地はろっどにもエムにも無い。
某を名乗る石川秀介が、両手で“フリーズ”を放つながら、2人は反撃出来なかった。
某は素早く、そしてフリーズされれば即死なのだから。
「行動パターンを作り出して、飽くまで“ゲーム”として某に見せ付けた。そうすれば、確実に僕が勝つと確信できたからだ―」
命からがらとはこの事で、絶体絶命ともこの事だ。
「スマッシュは某の“機械進行停止計画”に反対した。真っ向から某に宣戦布告を下した―」
「そして某は、自然が破壊されているのを感じ取って、バグを起こした―」
「スマッシュは某の不意打ちに呆気なく“フリーズ”された―」
「僕ら3人はデータで作られた人間―」
「スマッシュを元に戻すには、君らの機械操作能力とキャプチャーが必要だ―」
「ファイアーウォール!」
間一髪、エムはろっどの張り巡らせた火の壁によって命を助けられた。
だが、その壁は呆気も無く凍結される。これが、“フリーズ”。
「目を見たら“石化”じゃ無かったのか…」
「良い線いってるけど、そんな神秘な事は起こらないよ」
「ろっど…まだ分からないか…科学の進歩は生命を犠牲にしているんだ!」
「お前のやろうとしている事もまた、生命を犠牲にするぞ」
目まぐるしく動く「戦闘」の内で、エムはやっと思考が追いついて来た。
自分たちの力が必要だという事に。
(キャプチャーだと…何を吸収すれば―)
小動物とカオスドライブ、そのどちらかしか吸収できない―
(そうか!)
「プログラム、“ウイルス”、パスワード799、コード“某”」
「プログラム、“ワクチン”、パスワード351、コード“ろっど”」
濃い紫の玉は、放たれた挙句浄化され、だが某は右手から再び“フリーズ”を―
放つ。
Data−Remains.4,「データ」
きゅぴーん。
「なっ…!」
「プログラム、か。データにより作られた細胞、いわく、カオスドライブ!」
「某、ゲームオーバーだ」
冷凍光線はエムに吸収され、ろっどは両手を合わせ、叫ぶ。
「プログラム“セキュリティ”、パスワードオールナイン、コード“ろっど”!!」
某の機能は制御された。
異空間だった公園は、やっとの事で元の姿を現した。
「事件解決だよ、隊長」
「礼を言っておく、桟橋優…いや、ろっど」
こうして、犯人は意識を失い、データは改竄され、事件は迷宮入りになった。
1週間後。
「い、いえ、ああ、はい。何だか楽園のようなものが見えてですね…! そこには美少―」
記者会見を開いているスマッシュを見て、その少年、吉田龍一及び冬木野は、パンをむせた。
「―お、お花畑があったりして! で、ですね、二次元の―」
困り顔で語っているスマッシュを見て、その少年、佐藤光及びDXは、コーヒーをこぼした。
「―え? あ、はい。天使のようなキャラがいたり、メ―」
死んだはずのスマッシュが元気そうにしているのを見て、その少年、桟橋優及びろっどは、苦笑をもらした。
「―こほん。まあ、いえ、そう、転倒してしまったんですよ。お騒がせしました」
記憶には無いが、自分がしてしまったらしい事を自覚して、その少年、石川秀介及び某は、不機嫌そうな顔のまま目を伏せた。
どうやって蘇らせたかは単純明快で、“フリーズ”を解いたのだ。
データを解析し、表面部分を覆っている凍結の粒子を分解、消滅させた。
これは、ろっどの仕事だった。
そして、バグを引き起こした某は、C−5のキャプチャーによってバグ因子は取り除かれ、今では日常を謳歌していた。
休まずに脱け出した事はばれていたらしく、アイに泣かれたエムはたじたじしながら休みに入って行った。
こうして、事件は幕を閉じた。
表向き、事故という記録を残したまま。
幕を、閉じた。
「この作品は、フィクションであるチャオ。登場する人物、団体名、地域、その他などは全て実在しないチャオ。ご了承くださいチャオ」by,ビー
翌日。
「スマッシュさん生き返ったんだって? おめでとう!」
「スマさんおかえりなさい!」
「あの世はどうでした?」
「スマさん、一体何があったのか教えて下さいよ!」
「………お前ら鬼か!」
登校したスマッシュ、和田 須磨は、クラスメートからの嫌味と質問を一斉に浴び続けた。
友人4名はその姿を恭しく見つめており、助けるつもりもさらさら無かった。
「ま、あれだな」
ろっどこと、桟橋優が苦笑を浮かべながら言おうとしたところを、
「どれだよ」
DXこと、佐藤光がそれを遮り、
「須磨も大変そうだねえ…」
冬木野こと、吉田龍一がちっとも案じていなさそうな声で言うと、
「結果よければ全て良し、だな」
某こと、石川秀介がそれを占めた。