(1)

 若くしてGUNに配属された仲神春樹。持ち前の戦闘技術を生かし、彼はとある人物の暗殺に早くも成功する。
 その実力から、新米にしては波風が強かったが、彼はそれに負けない程の強い精神を持っていた。周りから見ても分かるほどに、彼は自分に自信があった。
 いわく、「自分にこなせない命令などひとつも無い」と。

 そんな中、彼、仲神春樹にひとつの命令が下される。


 ——謎の生命体、「コードCHAO」を抹殺せよ。


 『コードCHAOを抹殺せよ』 作:ろっど


 1 仲神春樹とそれを取り巻く状況


 仲神春樹はいつも一番だった。勉強でも一番、運動でも一番、彼に出来ない事など無く、苦手なものなど一つも無かった。
 もちろん、彼の性格に由来しているからでもある。彼は完璧主義者なのだ。だが、それを成し遂げる努力の出来る人間性が彼の「一番」たる理由だった。

 強いて欠点を挙げれば、社交性ゼロ。その一点に絞られる。

「もっとやさしければ良いんだけどねー」
「だよね。あ、仲神くんよ。きゃー、相変わらず冷たい顔」

 そんな彼は現在、上司に呼ばれていた。大切な命令があるとの事。訓練を終えた彼は休養をとっていたのだが、突然訓練教官が大きな態度でやって来て、その旨を伝えたのが最新の記憶である。
 GUN関東本部の中で、仲神春樹は「研修生」という立場にいた。これは彼がまだGUNに入って二週間しか経っていない証であり、しかしその成績からこうやって任務を与えられる事も数多くある。
 こんこん、と重たい鋼の扉をノックする。扉越しに返って来た声は、くぐもっていた。

「失礼します」

 きびきびとした動作で春樹は扉を開けた。その部屋は立方体に作られた完全防備の一室で、無駄なものを一切省いた、まさに鉄格子の部屋である。
 さっと敬礼してから、春樹は直立不動の姿勢で待った。

「君に任務がある」

 眼鏡を掛けた切れ長の目を持つ上司は、GUN副司令官。単刀直入に言えば、関東本部で第二に偉い存在だ。
 春樹はそのままの姿勢で眉毛一つ動かさない。これ一つで一芸に秀でているといえるほどのポーカー・フェイスだった。

「コードCHAOを抹殺して欲しい。詳細はこの書類に記載されている。使用武器は倉庫から自由に取り出して良い。これはランクSの超難関任務だ。今までに部隊のエリートがBIGFOOTを使用して八十人、挑んだが全滅した。もはや君しか希望はいない」
「了解です、須沢副司令。期限はいつまででしょうか」
「一週間。それまでに任務を達成できなかった場合、他の人に任務は移される。ああ、失敗しても階級に変化は無い。これは特例任務なのだからな」


 春樹はひとまず食堂へ向かう事にした。腹が減っては戦は出来ぬ。昔の人の言葉だが、案外的を射た意見だと春樹は解釈していた。
 食堂はGUN東棟の端にある。規模の大きいそこは研修生にとっては先輩と関わり合う憩いの場所であり、春樹にとってはただのシステム、食堂という名の必須アイテム同然である。
 食堂はやはり賑わっていた。群を抜いてトップクラスの実力を持っていた春樹が与えられた訓練をクリアしたのがおよそ一時間前であるから、恐らくは今さっきクリアしたばかりの研修生が集まっているのだろう。彼は無駄のない動作でカレーライスをフロントから取ると、隅の方に席を置いた。
 辺りが静まって行く。「研修生である仲神春樹のところへ、上官が来て何かを命じた」という噂は瞬く間に広がっていた。だが、当の本人に話しかけようとする無謀な輩は誰一人としていない。

「はるき!」

 訂正しよう。たった一人だけいた。
 その女性は長い髪を肩辺りで結び垂らした日本人女性で、顔は若干整っていると言えなくもないが、若々しい輝きがある訳でもない。いわば「無難」という表現が適した女性である。
 GUN本部で自分から進み仲神春樹に話し掛けるのは禁忌(タブー)に近い。彼は百年に一度の天才児であるが、同時に百年に一度ほどの異端者だったからだ。ところが例外はどこにでもいるもので、彼女はその例外に分類される唯一人者——……。

「報告は?」
「……午前九時半、研修生訓練開始。午前十時五十二分、訓練終了。上官に呼ばれ副司令室へ行きました。これ以上は機密情報に該当するため報告する事が出来ません、軍曹」
「——機密情報(トップ・シークレット)? 研修生のあなたが保持する? まさか、そんな事あるわけ……」

 彼女の言葉を軽々と無視し、カレーライスを頬張る春樹。うむ、なかなかの味であると古風な言い回しでモノローグ的に語ってみるが、そういえば昨日もカレーライスだった。そして昨日も同じモノローグを流した気がする。春樹は脳の活性化のために、明日は違う料理を持って行こうと考えた。
 完。彼の頭の中でその漢字がどしりと現れる。これ以上話すべき事も、聴くべき事さえ何一つないのだ。当然であろう。
 しかしそうは考えなかった人物がいた。該当する人物は一人しかいない。

「春樹、人の話はちゃんと聴こうね?」
「尽力します」

 無駄な言動は省き、エネルギー消費を抑えるのが仲神春樹の仲神春樹たる特徴だった。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第331号
ページ番号
2 / 19
この作品について
タイトル
コードCHAOを抹殺せよ
作者
ろっど(ロッド,DoorAurar)
初回掲載
週刊チャオ第331号
最終掲載
2010年1月6日
連載期間
約1年5ヵ月12日