(続)父の日 ―Father's day―

家には何と・・・。顔色が良くないチャロウがベットに寝込んでいました。

「お、お父さん!何があったのチャオ!?」
「や、やぁ・・・。チャオスケ。」
今まで元気があり、はっきりとした声だったのに弱弱しい声でした。

「何で、何でお父さんがこんなことにならないといけないのチャオ・・・?」
チャオスケの目には涙が出ていました。
「お父さんは寿命チャオ・・・。誰でも生まれれば、死ぬのチャオ。」
「そんなの嫌チャオ!どうして死ぬチャオか?何で死ななきゃいけないのチャオか?」
「死ぬのは終わりじゃないんだよ。チャオスケ・・・。ゴールであり、スタートなのチャオ。」
「でも、何で・・・。」
だけど、チャロウは何も答えず、瞼を閉じました・・・。
「お、お父さん?どうしたチャオ?返事してチャオ・・・。お父さん・・・。」
瞼を開けないチャロウに駆け寄り、必至にチャロウの身体を揺すりました。

だけど・・・。それは次第に出来なくなりました。チャロウの身体に繭が包み込み始めたのです。
包み込まれたチャロウの身体を、チャオスケは泣きながら必至に揺すりました。

そして、数分後・・・。灰色の繭は全身を包み込み、チャロウの身体は消えてしまいました。

「お、お父さん・・・。」
そう言い、チャロウが居たベットを見ながら、泣きました。
その泣き声は、三日続いたそうです・・・。

チャロウが死んでから数週間が経ちました。
チャオスケは『外見』は明るくなったように見えましたが、『中身』はまだ暗くなっていました。

そんなある日。あの日走って来たあのチャオがまたチャオスケの前にきました。
「手紙チャオ。家に戻って見るといいチャオ。」
そう言うと、チャオスケに手紙を渡し、また走り去っていきました。

家に戻り、手紙を開けると・・・。チャロウの字でこう書いてありました。

この手紙を読んでいる時には、もうお父さんは居ない筈チャオ。
チャオスケ。一人にさせてしまって申し訳ないチャオ。
お父さんは生まれつき病気で、死ぬ日が近いのを分っていたチャオ。
お母さんも、お父さんと同じ病気で死んでしまったチャオ。
丁度死んでしまうのは父の日辺り・・・。父の日に死んでしまうなんて可笑しいチャオね。

ただ・・・。不安と残念な事が少しだけあるチャオ。
不安な事は木の実取りが出来るか。一生懸命頑張るチャオよ。
残念な事は・・・。父の日に一度もプレゼントをくれなかった事チャオ。
強請るなんてお父さんらしくないけど、一度でいいからプレゼントをチャオスケから貰いたかったチャオ・・・。

お父さんは数日後にはスタートラインにまた立って、人生を歩み始めるチャオ。
どこかで会えるといいチャオね・・・。


手紙には涙の跡が幾つも残っていました。きっと泣きながら書いていたのでしょう。
チャオスケも同じく泣いていました。
「お父さん、親孝行じゃなくてゴメンチャオ・・・。」
そう言うと、大きな声で泣き出しました・・・。


時は過ぎ1年後。チャオスケは既に青年になっていました。
木の実取りもこの年齢じゃ絶対に出来ないのに、唯一チャオスケが出来るようになったのです。
早いうちに木の実取りをやらせていたのも、お父さんの考えだったのでしょう。
バスケットの中に木の実を数個入れ、満足そうに笑いました。
「さて、これで終わりチャオ!」
そう言うと、急いで家に戻りました・・・。

家に戻ると、それは1年前と全然変わらない状態でした。
チャオスケは何も言わず、本当は居る筈のチャロウのベットに木の実をおきました。
しばらく黙っていると・・・。笑いながらチャオスケはこう言いました。
「お父さん、行って来るチャオ!」
そう言うと、駆け足で家から飛び出しました・・・。

(end)

このページについて
掲載号
週刊チャオ第120号
ページ番号
2 / 2
この作品について
タイトル
父の日 ―Father's day―
作者
MASUO(ますお,ます)
初回掲載
週刊チャオ第120号