「CHAOS PREVIEW」 part48

00 CHAOS WORLD CHAOS PREVIEW
Scene9

俺たちの背後にいたチャオの群れ。
それは愛でるべき対象ではない。
愛でようとしても殺されてしまうのだから。
俺のいた世界ではあれらと同じようなやつらはチャオスと呼ばれていた。
普通のチャオと区別されていないからといって油断してはいけない。
殺されてもおかしくない相手なのだから。
どうする。
このままドームまで逃げるべきか、身を隠すべきか。
俺の横で動いた。
自然とその動いたもの――オルガへと目が向く。
「このままドームへ行って」
そう指示する。
彼女はまるで盾となるかのように俺とチャオの間に立っていた。
まるで、ではない。
本当に盾になるつもりだ。
「でも」
「向こうの世界へ行くときは、オルガのいる世界を目指すこと」
遮って指示を続けられる。
「いない人間は補充できても、もういる人間を補充するわけにはいかないんだよ、橋本」
その言葉の意味を理解して俺は走った。
彼女がどのくらい持ちこたえてくれるかはわからない。
もしかしたら、1分も稼げないのかもしれない。
それでもその時間を無駄にするわけにはいかない。

奇跡か、強運か。
ドームまでチャオと遭遇することはなかった。
ここまで来ればもう大丈夫だ。
中にはチャオが大量に集まっているが、別に中に入らなくてはいけないわけじゃない。
外壁にもたれる。
しかし、どうして。
遅れてチャオがやって来ないのだろう。
やつらも目的地はドームであるから、オルガを殺したらすぐさま向かってくるはずだ。
それだけじゃない。
あの時遭遇した以外のチャオもいるはず。
そういうチャオたちをまだ見ていない。
オルガの知っているストーリーだと、乱橋は1匹のチャオを相手に戦っているそうだ。
わざわざこちらへ向かっているチャオを倒して回っているわけではない。
あの白髪の少年ももう死んでいる。
チャオを倒せる人間はもういないはずだ。
警戒する必要がある。

だが、結局。
チャオが襲ってくることはなく。
それどころか、俺はチャオを見かけることがないままだった。
不自然だ。
どうして、来ない?
解を導き出せないまま。
時間が来た。
光の柱に包まれる。
世界が壊れる。
いや、これは俺がこの世界に存在できなくなっているのか?
まあいい。
目的地はオルガのいる世界だ。

また世界ができあがっていた。
瞬きをする間に。
ここは室内、か。
「お、来た」
聞き覚えのある声。
オルガの声。
俺を別の世界に連れてくるために自ら犠牲となった少女と同じ声。
「きゃー!橋本君ー!」
別の声が横から抱きついてくる。
黒く長い髪が顔にすりつけられる。
「はい離れろ自称ヒロイン」
紫色の髪の少女が俺に抱きついた少女をはがす。
「ここは?」
「ようこそ」
少女はまるで俺が来ることを知っていたかのような挨拶をした。
さっきも、来た、と言っていた。
俺はもうここが目的地だったのだと確信して、嬉しくなる。
成功したんだ。
少女の次の言葉を待つ。
確信が、事実に変わる言葉を。
その口が動いた。
「ここは――」

――予告編。

CHAOS WORLD CHAOS PREVIEW 完

このページについて
掲載日
2009年12月21日
ページ番号
48 / 75
この作品について
タイトル
CHAOS PLOT
作者
スマッシュ
初回掲載
2009年11月3日
最終掲載
2010年7月17日
連載期間
約8ヵ月14日