「RESULT AND POISON」

「どうするんだ。あれだとそのうち脱出されてもおかしくないぞ」
「本当にそうなんでしょうか。もしかしたらあれで十分かもしれません」
責めたてる先田の言葉を優希は受け流す。
「確かに、そのうちまたこちらに戻ってくるだろう」
後藤が先田の発言を肯定する。
先田は眉をひそめた。
こういう時、後藤は決まって何かしらのこちらにとって不都合な意見を持っているからだ。
後藤の性格上、そうでなければ相手の発言を肯定することは基本的にない。
「カオスエメラルドを1つ手に入れた代わりに彼女を封印しそこねた。時が経てば彼女は猛毒となり、我々を滅ぼそうと動き始める。それまで残された時間はおそらく少ない。これが現状だ」
よくここまで饒舌にまくしたてることができるものだと先田は思う。
自分の勢いをへし折られているような感覚を味わう。
後藤は偉い。
だがそれは決定的な差となって彼に決定権を握らせるのだ。
早い話、大抵どう話が転んでも後藤の思い通りの結論となる。
そうだとわかっているが、わかっているからこそなのか先田は釈然としない面持ちを隠し切れないでいる。
そして罠だとわかりつつも話を進めてしまうのだ。
「じゃあ、どうするんだ?」
「その前にカオスエメラルドを全て集めてしまえばいい。そうしたら今度はこちらが宇宙へ逃げればいい」
今のARKもスペースコロニー・アークを真似た物であることには違いない。
スペースコロニー・アークが飛べるのであれば、それを基に作られたこれも飛んで然るべきなのだ。
「そのカオスエメラルドはどうやって集めるんだ」
「残りは、あと……3つだったかな?」
「そうですね。あと3つです」
「そうか。3つか。それらはいかなる手段を使っても入手する。無論、どこにあって誰が所持しているか特定するまでが問題だろう。だが、おそらくは出来損ないが拾ってくることだろう」
「拾えるとは思えないがな」
「なめてはいけないな。あれらは兵隊としては出来損ないではあるが確かに怪物でもあるのだから。人間が探すよりも確実に、そして迅速に察知し回収してくることだろう。そして力を得た彼らは我々の所へ向かってくる」
大した根拠もないのに自信がある。
後藤がどこまでそれらについて正確に把握しているのか。
少なくとも自身よりかは知っていることは多いはずだ。
そう先田は評価している。
あるいは、今自分がそうされているように、掌の上で躍らせる準備が既にできているのかもしれないとも考えた。
「ああ、そうだ。オルガ君と橋本君についてだが。君のサポートのおかげで生き長らえることができたようだね。感謝しておこう。せっかく生き残ったのだから、彼らには有意義な任務をそのうち与えようじゃないか」
「……」
その挑発的な物言い。
これもまた計算の上で放たれた正確な銃弾だとするならば、何を意味しているか推測することは簡単だ。
脅しである。
邪魔をするな、ということだ。
そういう釘を刺したのである。
オルガと橋本が邪魔者と認識されていることもここからわかる。
そして。
そういうことを言ってのけるということは、言われた側に残された時間は短いということだ。
のんびりと考えられる程の猶予はないのだろう。
つまりそれは残りのカオスエメラルドがすぐに集まることを示唆していた。
3つのカオスエメラルド。
それらが短期間で手に入れるという確証があるのかもしれない。
そう先田は睨んだ。

このページについて
掲載日
2010年5月6日
ページ番号
67 / 75
この作品について
タイトル
CHAOS PLOT
作者
スマッシュ
初回掲載
2009年11月3日
最終掲載
2010年7月17日
連載期間
約8ヵ月14日