「RESULT AND PAIN」

ケイオスになるための人体改造が昨日行われた。
3人目のケイオスの初陣。
初めてチャオスと戦う日。
私はお姉ちゃんと一緒にチャオスが大量発生した場所へ向かった。
現場へ向かう車を運転しているのは所長だ。
その役目はいつもならば先田さんであるはずで珍しいと思った。
それだけ新しいケイオスに期待しているのだろう。
到着すると、確かにチャオスが群れていた。
けれどその数は10あるかないか。
既にほとんどがどこかへ行ってしまったのだろうか。
それとも元からその程度の数だったのか。
初めての実戦としてはまあ妥当な数だと思う。
負ける要素はおそらく無い。
だから大丈夫なのである。
そして私は撃たれた。
比喩でもなんでもなく、銃で撃たれた。
チャオスは全滅していて、既に跡形もなく消えてしまった。
所長もお姉ちゃんもいない。
車の去る音を聞いたので、帰ってしまったのだろう。
跡形もなく消えることのできない私は路上に倒れている。
撃たれた痕跡として私の体には穴が空いていて、そこから暖かい液体が流れ出ている。
銃をチャオスが使うことはない。
万一銃をキャプチャしていたとしても腕やどこかにパーツとしてそれが見えるはずだ。
そんなものは見当たらなかった。
だから撃ったのは人間。
所長か、お姉ちゃん。
所長ではないと思う。
まだ早いから。
私を捨てるとしても、そうするのに万全な状況になってからでないとそうしないはずだ。
強気になっても問題ないような状況を作ってから強気になる。
あれはそういう人間だ。
現状で私を殺そうだなんて考えは持つはずがない。
お姉ちゃんはどうだろうか。
彼女は自分のためなら何でも切り捨てることができるだろう。
情だけではない。
他人の命もだ。
邪魔ならばなおさらとっとと消すであろう。
私は彼女にとって邪魔な存在であったか?
結論はすぐに出る。
はい、私は邪魔な存在でした。
思い当たる節があった。
もし人間がまるでプログラムされた通りに合理的に機械的に動くものだとして考えるのであれば、彼女がこのタイミングで私を殺すのは非常に自然だ。
だからこれは滝優希の陰謀。
滝優希のプロットが順調に進んでいくわけか。
そして私のものはおじゃん。
一本取られちゃったなあ。
どうしたものか。
少し困る。
服にも穴が空いてしまった。
というか現在進行形で服に血が染み込んできている。
買ったばかりだったのに。
真っ白なマイアウターウェアが赤くなっておられる。
これじゃあもう着られない。
この際新しい服を買ってイメージチェンジ?
それもいいかもしれない。
今度買う時は血がついてもいいように赤いのを買おう。
赤って派手な色だけど、血がついても誤魔化せる方が大事だ。
「痛いなあ」
考えがまとまって、何も考えることがなくなって。
そうなってやっと体にできた穴への感想が口から出た。
本当に痛い。
これはどうにかしないと。
どうにかしないと辛いままだ、これ。
血も出まくるし。
どうすればいいんだろう。
例えば、他人の血や肉で失った分を補充するとか。
この苦痛から逃れる。
それをひたすら、望んだ。

このページについて
掲載日
2010年2月10日
ページ番号
60 / 75
この作品について
タイトル
CHAOS PLOT
作者
スマッシュ
初回掲載
2009年11月3日
最終掲載
2010年7月17日
連載期間
約8ヵ月14日