チャオっていう生物がいる。
ペットとして人気なそいつらは、きっと人間に何かを与えてくれるのだと信じられていて、
幼稚園だとか病院だとかで飼われていたりする。
だけど本当は、チャオなんかにできることは何もないのだ。
だから、期待を裏切られて、傷つく。
そんなチャオが好きなんてどうかしている。
私は大嫌いだ。チャオなんか、好きでたまるか。



———カオスチャオなんか大嫌い———



ライカ、っていう名前のチャオがいた。
その名前の通りでそのチャオはライトカオスチャオという珍しいチャオだった。
私の働いている病院の敷地内にあるチャオガーデンにそのチャオはいた。
チャオガーデンの中は一面緑の世界で、真っ白な壁に飽きた患者が気分転換するには丁度いい場所だった。
だから、珍しいそいつは病院内のいわゆるアイドルだった。
私はちっちゃい頃から病気でもないのにこの病院に来てはチャオガーデンで遊んでいた。
その頃からこいつはいたから、随分長いこと生きているのだろう。
不死身っていうのも本当なのかもしれない。
結局、そのことが災いして私は看護師になってこの病院で働くことになってからチャオガーデンの管理を任されてしまった。
そのせいで毎日のようにこのライカとも目を合わせなくちゃいけない。

「なんで私がこんなこと」
歯に力を込めて、睨むようにチャオガーデンを見る。
雨だというのに、少し離れたあの建物まで行かなきゃいけない。
病院側と通路かなんかで繋がらないものだろうか。
傘を差して乱暴に足を踏み出す。
水の跳ねる音を出した足で蹴るように水滴を飛ばす。
そうやって進んで、チャオガーデンのドアを乱暴に開ける。
中は快晴だ。
外は雨で、不機嫌なところやってきたというのに、チャオ達は楽しそうに遊んでいる。
ボールがこちらへ飛んできた。
私の顔くらいの高さで私の横の壁にぶつかった。
私はボールとチャオを一瞬だけ睨んで、すぐに目に力を込めて視界を暗くする。
怒りをぶつけたら負けなような気がする。
しばらくして目を開く。おそらく何も睨んでないだろう。
早足でチャオ達に餌をやる。それ以外のことはしない。
作業的に次から次へと餌を与える。
食べているのか、食べていないのか、足りないのか、十分すぎるのか。そんなことは関係ない。
途中で餌をやったらライカが食べずにこちらを見てきた。
何が言いたいのか、わからない。昔の自分なら、わかったかもしれない。
私はすぐに目をそらして、次のチャオの方へと足を動かす。
全てのチャオに餌をやった事を確認して、すぐさまチャオガーデンから出た。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第329号
ページ番号
1 / 3
この作品について
タイトル
カオスチャオなんか大嫌い
作者
スマッシュ
初回掲載
週刊チャオ第329号
最終掲載
週刊チャオ第330号
連載期間
約8日