第一話 前編
「回帰を夢見て」
~3日前~
「わが国の第一前線の兵たちは、今もグルーの兵士と戦闘を繰り広げておる!」
広いホールの中に、気合の入った大声が響き渡る。
「そろそろ新型兵器の導入とともに、新たに兵を戦地へ送ろうと思う!」
今は、軍の最高指導者が、兵士達を集めて話をしているところだ。
「おいアーツ、どうやら俺たちの出番のようだぜ。」
「ああ。新型の兵器だってさ、わくわくするな!」
「今日諸君らを集めたのは他でもない。戦地へ行き、今もなお戦い続けている兵士達の
手助けをしてやって欲しい!」
そういうと、兵士達はみな一斉に右手を上げて敬礼のポーズをとった。
「戦地出立は明日の1200時だ。いい知らせを待っているぞ!
では、今日はこれにて解散!!」
「なあアーツ・・・いいのか?」
「は?何がだよ、ロンド。」
休憩室で、二人の兵士が話をしていた。
「プラムのことだよ。あいつお前が戦地へいくなんていったら、
きっと泣くぞ?」
「あいつならきっと大丈夫だよ。もう立派な大人だからさ。
炊事も、洗濯も、掃除も教えてある。
一人でもちゃんとやっていけるさ。」
「そういう問題じゃなくてさ・・・お前気付いてないのか?」
「はあ?何にだよ。」
ロンドは、肩を落として大きくため息をついてから言った。
「・・・いや、やっぱいいわ。お前はそういう奴だったな。」
「な、何だよ。」
アーツは、プラムという名の妹と二人で暮らしていた。
城の給料なんてたいしたものではなかったが、二人で生きていくには充分だった。
今までずっと一緒に暮らしてきた兄が、戦地へ行ってしまう・・・
いつ帰って来れるか、無事に帰って来れるかすらもわからない。
それなのに、そう簡単に行かせてくれるか、ぐらいのことは、
家への帰り道でアーツも考えていた。
(そんなことぐらいはわかってる。でも任務なんだ、仕方ないだろ?)
考えをめぐらせた末、明るい顔で帰ろう、そしてはっきりと言うんだ、と決心をした。
この時にはすでに、家の入り口まで到着していた。