~宇宙の神秘編~ ページ3
「あー…えー…っと…」
マイクのテスト中ではない。言葉が詰まっているのだ。
普段は、常時喋りっぱなしでやかましい事この上ないという印象を持たれがちのレッドだが、まさしくその通りで黙れといってるのに喋り続ける迷惑な男である。
そのレッドが言葉に詰まるというのは非常に珍しい事で、それはつまり目の前にいるこの生物がレッドを黙らせるほどの強烈なインパクトを放ったという事実に他ならない。
「…うぉっほん!あー、君かね?我らチャオレンジャーに挑戦する権利を獲得したという実力者は?」
チャオレンジャーは、チャレンジレースの十二ある階級の中で、十一番目に位置する場所を守っている。
つまり、チャオレンジャーに挑戦するということは、必然的にそれなりの実力を持っているという事になる。
今更だが、チャオレンジャーの面々だってそれなりの実力があるから、チャレンジレースの番人役に任命されたのである(任命したのはガーデン所有者の会長)。
普段はあんなだけど、やるときはやるんです。残念ながらイエロー隊員の実力は未だ闇に包まれたままですが。
話を戻すと、先ほどのレッドの問いに謎の生物は、コクリとうなずくだけだった。
「ふむ…もうひとつ質問したいのだが。…君は、某ジ〇リ映画に出てきた、コ〇マとは別の生き物かね?」
チャオレンジャー隊員全員が思ったことを、レッドが代表として目の前の生物に聞いた。めちゃくちゃ似ている。目はこっちの謎の生物のほうが怖いが。
その質問に、謎の生物は首を横にふった。違うのか。
「では…某カップラーメンのCMの…ホラなんだ。「ゆーてぃー」とかいう生物とは別の生き物かね?」
なるほど、顔はこっちのほうが似ている。しかし、謎の生物はまたも首を横にふった。コレも違う。
「…では最後の質問だ。君は一体何者だね?少なくともチャオではないだろう」
「…」
謎の生物は首も振らずしばらく黙りこくった後、初めてその声を披露した。
「ワレハ…」
チャオレンジャー全員に緊張が走る!
突如目の前に現れた謎の生物!彼(彼女?)から発せられる次の言葉はなんなのか!そこに彼(彼女?)の正体を暴くキーワードが隠されているのか!?
隊員全員、よぉく耳を澄まし、次なる言葉を聞き漏らさないように…。あたりは一瞬静寂に包まれ、そして……!
「ワレハ、ウチュウジンダ」
「…」
しばらく静寂がその場でくつろいでいた。
さすがに誰も「自分は宇宙人だ」とカミングアウトされたときの反応など準備していなかったので、瞬時にリアクションをとるのは誰にも出来なかった。
チャオレンジャー、全員一斉に後ろに振り向いてちょっち作戦タイム。
「宇宙人…だってよ」
「確かに見た目はそれっぽいですねぇ。なんだか日ごろ持っている宇宙人のイメージ像そのままって感じですけど」
「まぁまて、みんな落ち着きたまえ。もし本物だとすれば、これは日米とか日韓とかそういうレベルの話ではないぞ!星と星との間で良好な関係が結べる時代が到来したという事なのだよ!」
「そうでしょうか?もしかしたらこの星を征服しにきたのかもしれませんよ?」
「はっはっは!ブルー君よ、彼のつぶらな瞳を見たまえ。そんなことを考えるような人物に見えるかね?よぅし、私がひとつ両星の架け橋になってやろう!」
そういうとレッドは謎の生物(自称宇宙人)のほうへ向きなおし、明るい笑顔で話しかける。
「やぁ失敬、宇宙人殿!なにぶん我々は地球以外の生物を見た事がないものでな、少しばかり驚いてしまったわけだよ。ところで宇宙人殿、貴方は遠路はるばるこの星まで何を目的にやってきたのだね?観光かね?それとも移住前の下調べかな?どちらも大歓迎だ!なんならこの星の観光名所を我らが案内してやってもいぞ!移住の際にはいい物件を紹介してやる!都心に聳え立つ超高級マンション三百階建てなんかどうだ!部屋はホテルのスィートルーム並み、料金は格安いうことナシだ!まぁ飛び降り自殺者が多く、たびたび怪奇現象が起こるというのが唯一の難点だが……」
「ワレハカンコウニキタノデハナイ。イジュウトイウノモマチガッテハイナイガ、チガウ」
謎の生物(自称宇宙人)の話す言葉はアクセントの全く無い、全て一定の音だった。
そしてそれを話す謎の生物(自称宇宙人)の顔は、怖いぐらいの無表情だった。
「じゃ、何しにきたのだね?」
「ワレハ、コノホシヲセイフクスルタメニヤッテキタ」
「…」
もっかい作戦ターイム。
「…どうやら良好な関係を結べるようになるのはまだまだ先のようですね」
「はっはっは!何をいう!きっとアレはこちらでいうイッツアメリカンジョークなのであろう!」
「俺には冗談には思えん…。あの目は本気っぽいぞ」
「まったくグリーン君!君は冗談を軽く流す事もできんのかね!そんなことではいつまでたってもモテんぞ!」
「…それよりリーダー。先ほどからピンクさんの様子がおかしいのですが…」
「うん?」