チャオの企み

最初に登場するチャオの説明を読んでから話を読んでください。


名前:ギル
転生を2回しているチャオ。平穏な毎日に飽きてきている。


名前:ケイト
ギルの親友のチャオ。ギルのすることは暖かく見守ってやろうと決心し、巻き込まれるのを避けている。


前ふりが長くてすいません。それでは話をどうぞ。






とあるチャオガーデンにギルというチャオがいました。ギルは転生を2回しているからか、この平和なチャオガーデンに飽きてきていました。

「暇だ。暇すぎる!もう嫌だ!俺をここから出してくれー!」

ギルは我慢しきれずに叫びました。

「うるさいなぁ。聞き飽きたよその台詞。これで何回目だと思ってるのさ!」

ギルの叫びを冷たくあしらうのはケイト。こんな返答をしていてもギルを最も理解している親友だ。

ギル「ん~・・・56回くらいか?」

ケイト「62回だよ!もう!毎日毎日おんなじことばっかり言って!聞かされるこっちの身にもなれよ!大体何がそんなに不満なんだよ?」

ギル「何がだって?!すべてだ!すべてにおいて不満なんだ!」

ケイト「そんな漠然と言われても僕には理解できないんだけど?」

ギル「この平穏な毎日。木の実は食べたいときに食べられる。泳ぎたければ好きに泳げる。まるで楽園だ。」

ケイト「その通りじゃないか。・・・今のどこが不満?」

ギル「言いたいのはそこじゃない。それは見せかけだ!青い空、広大な海が目の前に広がっている!しかし!見えない壁があるかのように海に行こうと思えば阻まれ、大空を舞うにも限界がある!まるで牢獄だ!」

ケイト「考えすぎだろそれは。僕はこの状況に不満はないし、のんびり暮らせていいじゃないか。」

ギル「それが嫌だって言ってるんだ!俺は冒険したいんだよ!広い世界を知りたい。・・・それにここから逃げたい。」

ギルは最後の一言を深刻そうな顔で言いました。それを見て、ケイトはギルは単なる好奇心で言っている訳ではないのだと悟りました。

ケイト「・・・なんで?悩みでもあるのか?」

ギル「・・・カオスチャオになりたくないんだ。」

ケイト「は?いきなり何言ってるんだよ?」

ギル「だって俺は2回転生してる。カオスチャオになれる条件ができちまってるだろ?このままだとカオスチャオに進化させられるかもしれないじゃないか!」

ケイト「それこそ考えすぎだよ。そう決まった訳でもないのにさ!」

ギル「決まってるさ!今のところ2回以上転生してるのは俺だけだし、カオスチャオは1匹もいない!チャオブリーダーとしてカオスチャオは手に入れたいはずだ!」

ケイト「そうかもしれないけど・・・そもそもなんでカオスチャオになりたくないんだ?」

ギル「表情がなくなるのが嫌だ。それに、転生して、次はどんなチャオに進化するのか、その楽しみが消えてしまう。」

ケイト「そうか・・・。確かにそれは嫌だな。
わかった。脱走の手伝いはしてやるよ。だけど僕はここが気に入ってるから一緒には行かない。」

ギル「ありがとう。手伝ってくれるだけでも十分だ。」


そして2匹はこっそりとチャオロビーに行きました。

ケイト「結局行くんだったらさっさと行動にうつせばいいのにー。」

ギル「ごめん。愚痴ばっかり言って。」

ケイト「いいってことよ!じゃ、さよならだな、親友。」

ギル「・・・もう会うことはないだろうな。
さよなら。親友。」

こうしてギルは広い世界に飛び立ちました。残されたケイトは静かにチャオロビーからガーデンに戻りました。
親友との別れ。それは悲しく、寂しくもあります。しかし、ケイトはそれほど悲しくはありませんでした。
なぜなら―。

数日後

ある1匹のチャオが迷子のチャオとして、ガーデンに連れてこられました。

ケイト「短い別れだったな、親友。」

ギル「・・・まったくだ。」

こういって2匹は苦笑しました。そう、ケイトはこうなるだろうとわかっていたのです。

ギル「脱出作戦の練り直しだな。」

ケイト「僕は参加しないけどね。」


いつか脱出できるその日まで、ギルの挑戦は終わらない。

END

このページについて
掲載号
週刊チャオ第166号
ページ番号
1 / 2
この作品について
タイトル
チャオの企み
作者
白露
初回掲載
週刊チャオ第166号