ページ1

人里離れた山の中に、チャオたちの暮らす森があります。
お日さまの光がまぶしくて、木々のみどりがあざやかなすてきな森です。

チャオの森は、夏まっさかりです。
いつもはあたたかくて気持ちいいお日さまの光も、今の時期は、暑くてちょっと遠慮したくなります。

いつもは元気にかけまわっているチャオも、今は涼しい木陰で休んでいます。
お絵かきをしたり、楽器を鳴らしたりして、のんびりしています。

別の木陰では、ふたりのチャオがよりそっています。
とっても仲が良さそうで、ふたりでいるのがとっても自然な感じです。
ふふふ、この森でここが一番熱いところみたいですね。

こんな風にチャオたちも、暑い夏は涼しいところでおとなしくしているのが好きなのでしょうか?
いいえ、そんなチャオたちばかりではありません。

暑い夏の日差しの下でも、元気いっぱいに遊んでいるチャオたちもたくさんいます。

森の中で遊んでいるチャオもいますけど、夏はやっぱり水の中で遊ぶのが一番です。
森のそばを流れる小川から、チャオたちの元気な声が聞こえてきます。

ゆっくりと気持ち良さそうに背泳ぎをしているチャオがいます。
立ち泳ぎをして、つぎはどちらに泳いでいこうかと考えているチャオがいます。
なんにんかで水のかけあいをして楽しんでいるチャオがいます。

そんなのんびりしたところから少し離れた場所では、なんにんかのチャオが泳ぎの競争をしています。

競争をするくらいあって、みんな泳ぎがとても上手です。
でも、やっぱり泳ぐことではミズチャオが一番ですね。
ちょっとずつ、他のみんなを引き離していきます。

走ることではだれにも負けないソニックチャオも、水の中ではいつもの速さが出せません。
力自慢のオニチャオは、泳ぐ時にあげる水しぶきでは一番ですけど、そのしぶきの高さほどは速く進んでいかないようです。
ナイツチャオは、泳ぐことでは勝てないとわかると空を飛んでミズチャオを追いかけはじめました。
とっても速くてすぐにでもミズチャオに追いつきそうです。
でも、これは反則ですよね。

泳ぎの競争は、そのまま、ミズチャオが一番でゴールしました。

ミズチャオは、とっても嬉しそうです。
負けず嫌いなソニックチャオは、もう一回勝負しようと言っているようです。
でも、どうやらそれは、泳ぎじゃなくて走る方の競走みたいですけども。

オニチャオは、いつの間にか高い水しぶきをあげることに夢中になっています。
ナイツチャオは、その水しぶきの上を気持ち良さそうに飛んでいます。

こうして、ひとつの勝負が終わり、次の勝負の約束ができました。
今度は、森の中を競走するチャオたちに会えるかもしれませんね。

こんな風に泳ぐことを楽しんでいるチャオたちから、すこし離れた岸辺にひとりのこどものチャオが座っていました。
ときどき、小川に近づいてみますけど、水の中に入ることはしませんでした。

じつは、このチャオは小川でおぼれたことがあって、水に入ることがこわくなってしまったのです。
でも、みんなといっしょに遊びたくて、なんとか小川に入ろうとがんばっているのです。

とはいうものの、なかなか飛び込む勇気が出てきません。
小川に手を入れてみたりしますが、それが精一杯みたいです。

そんなチャオに、泳ぎの得意なヒーローチャオがやさしく声をかけます。

だいじょうぶ。
こわくないよ。
ほら、わたしが教えてあげるから。
心配しないで。

ヒーローチャオは、チャオの手を取って、ゆっくりと水に入っていきます。
こどものチャオも、どきどきしながら、いっしょに水の中に入ります。

ほら、こわくないでしょ。
さぁ、水に顔をつけてみて。
とっても気持ちいいから。

そんなヒーローチャオの声が聞こえてきます。
こどものチャオは、言われたとおり、水に顔をつけてみました。

本当に、ヒーローチャオの言うとおりでした。
とっても気持ちよくて、こわいと思っていたことが不思議なくらいです。
気持ちよすぎて、長く顔をつけすぎてしまったので、またおぼれかけたくらいです。

でも、こんどは、ヒーローチャオがやさしく手を握ってくれているのでだいじょうぶでした。

水から顔を出したこどものチャオは、ヒーローチャオと目があって、思わず笑ってしまいました。
水の中って、こんなに気持ちよかったんです。


(つづく)

このページについて
掲載号
週刊チャオ第22号
ページ番号
1 / 2
この作品について
タイトル
チャオの森の水泳教室
作者
懐仲時計
初回掲載
週刊チャオ第22号