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人里離れた山の中に、チャオたちの暮らす森があります。
澄んだ空気、きれいな水。
チャオたちにとって、一番快適な、とてもすごしやすい美しい森です。

そんなチャオの森のどこかから、チャオの歌う声が聞こえてきます。
とってもかわいくて、とってもあかるい、すてきな歌声です。

どこで歌っているのでしょう?
ちょっと探してみましょう。

あ、いました。
森の少し開けたところにある小さな岩をステージにして、ひとりのチャオが歌っています。
そのまわりには、なんにんかのチャオが歌を聞いています。

このチャオは、どんな歌を歌ってるのかしら?
きっと、楽しい歌なんでしょうね。
まわりで歌を聞いているチャオたちは、ほんとうに気持ち良さそうな顔をしています。

そんなすてきな歌い手さんの歌にも終わりがあります。
歌い終わったチャオは、ペコリとおじぎをして岩のステージをおりました。
みんなは、拍手でお迎えします。

あら、歌っていたチャオはちょっぴり照れているようです。
歌っているときは、あんなに堂々としていたのに、おかしいですね。

つぎに、ほかのチャオが岩のステージに上がります。

黒いからだがカッコいいダークチャオです。
自信満々で、腕をふりふり上がっていきます。
なぜか、軽くファイティングポーズなんかをとったりしてから、歌いはじめました。

それはそれは大きな声でした。
ほんとうに大きな声で、さっきのチャオとは迫力がぜんぜん違います。

でも、ちょっと声が大きすぎたみたいです。
それに、ちょっぴりオンチだったりします。

まわりのチャオたちは、耳をふさいで、イヤイヤをしています。
そんなことはおかまいなしに、ダークチャオは、もっと大きな声を出して歌いつづけています。

あらら、たいへん。
まわりのチャオたちが、とうとうガマンできなくなって、ブーイングをはじめてしまいました。

これには、さすがのダークチャオも負けてしまいました。
しょんぼりと岩のステージをおりていきます。

でも、つぎは、もっとうまく歌うぞと、コブシにちからを込めるのを忘れません。
・・・ちからを入れるところが違う気がしますけどね。

さて、気を取り直して、こんどはトビチャオのナカヨシさんにん組の登場です。
さんにんの歌声が見事なハーモニーを奏でます。

みんなでいっしょに歌うだけじゃなくて、ひとりだけで歌ったり、ふたりで歌ったりと、いろいろ歌い方を変えてみんなをあきさせません。
もちろん、ダンスも忘れちゃいけません。
息の合ったダンスも素晴らしいですね。

みんなも、すてきな歌とダンスに大満足です。
ナカヨシさんにん組は、手をつないで岩のステージをおりていきます。
やっぱり大きな拍手が迎えてくれました。

そして、こんどは、ヒーローチャオが、ちょっぴり自信なさげに岩のステージに上がりました。

大きな深呼吸を1回、2回・・・。
やっと歌う勇気が出てきたようです。

さあ、歌いましょう、と思ったら、もう1回、軽く深呼吸して・・・。
ついに歌いはじめました。

それはそれはすてきな歌声でした。
どんなに歌のじょうずな小鳥よりも、どんなにすてきな音を奏でる虫よりも、とってもじょうずで、とってもすてきな歌声です。
そして、とても感情のこもったすばらしい歌です。

心をこめて歌うのは、もう一度自分の歌を聞いてもらいたかったひとのことを思っているからです。
そのひとのことを歌っているからなのです。

そのひと。
この森に来る前に、短い間でしたけど、とってもたいせつにしてもらって、とってもお世話になったご主人さまのことを。

 楽しかったこと。
 嬉しかったこと。

 みんな、あなたがいてくれたから。
 ぜんぶ、覚えています。

 悲しかったこと。
 辛かったこと。

 ほんの少し、ありました。
 あなたのせいではないけれど

そんな声が聞こえてくるようです。

みんなも、昔お世話になったご主人さまを思い出しているようです。

おもちゃの楽器を取り出しているチャオもいます。
それは、ご主人さまにもらった大切なものです。
ご主人さまとお別れしてから、もう使うことはないと思っていました、でも、やっぱり大切に持っていたものです。
その大事な楽器を、ヒーローチャオの歌にあわせて、ちょっとえんりょ気味にならしています。

この森で生まれて、ご主人さまのいなかったチャオたちは、短い間でも、そんなすてきなご主人さまといっしょにいられたことを、少しうらやましいと思っているようです。


(つづく)

このページについて
掲載号
週刊チャオ第12号
ページ番号
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この作品について
タイトル
チャオの森の音楽会
作者
懐仲時計
初回掲載
週刊チャオ第12号