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人里離れた山の中に、チャオたちの暮らす森があります。
森のみどりが、やさしいお日さまのひかりに照らされて、きれいにかがやいています。
気持ちのいい風が、森の中を吹きぬけていきます。

あたたかい春をむかえたチャオの森では、桜の花が満開になっていました。


きれいに咲いた桜の花にさそわれて、チャオたちが桜の木の下にあつまってきました。

うすいピンク色をした桜の花があれば、こいピンク色をした桜の花もあります。
なかには、白い色の桜の花もありました。
いろいろな桜の花がありますが、どの桜もとってもきれいですてきな花を咲かせています。
チャオたちは、そんな桜の花を、のんびりと気持ちよさそうにながめています。

あるチャオは、桜の木からすこし離れたところに寝そべって桜の花をながめています。
べつのチャオは、桜の木にもたれて、真上にある花を見上げています。

桜をぜんぜん見ないで、ともだちとおしゃべりばかりしているチャオたちがいたり、持ってきた木の実を食べることに夢中になっているチャオもいます。
気持ちよさそうに居眠りしているチャオもいますね。

しだれ桜のカーテンの下をソニックチャオがうれしそうにかけぬけていけば、ナイツチャオは空を飛んで、木の上から桜の花を見ています。
ピンク色をしたチャオは、じぶんと同じ色をした桜の花をうれしそうにながめています。

あら?
桜を見ないで、地面ばかり見ているチャオがいます。
どうしたのかしら?

分かりました。
このチャオは、地面に咲いた黄色いタンポポの花を見ているのです。
桜の花もきれいですけど、小さなタンポポの花も、かわいらしくていいものですね。

ダークチャオは、手を口にあてて、ぽけ~っと桜の花を見上げています。
桜の花のうつくしさに心をうばわれたのかしら?

でも、なんだかちょっと様子が変ですね。
ときどき、口からよだれが出たりしています。
桜にむかって、大きく口を開けたりもしています。

あら、舞い落ちてきた桜の花びらが、ダークチャオの口に入ってしまいました。

はむはむはむ・・・。

ダークチャオは、桜の花びらを食べてしまいました。
ちょっとうっとりとした顔をすると、ダークチャオは、また口を大きく開けました。
よっぽど桜の花びらがおいしかったのでしょうね。
ダークチャオは、また桜の花びらが落ちてくるのを待っているみたいです。


こんな風に、チャオたちは、みんな思い思いのかたちで、お花見を楽しんでいました。

そんな楽しい雰囲気からちょっと離れたところにヒーローチャオがいました。
そこは、森で一番古い桜の木の前でした。

毎年、すてきな花を咲かせてくれていたこの桜の木も、今年はまだツボミもついていませんでした。

この桜の木は、もう花を咲かせることはないのかしら?
ヒーローチャオは、とっても不安になって、ここにきたのでした。

どうしたの?
だいじょうぶ?

ヒーローチャオは、やさしく声をかけながら桜の木に近づいていきました。
そして、抱きしめるようにして木に体をよせました。

とくん・・・とくん・・・。

ヒーローチャオは、桜の木の鼓動を感じました。

とくん・・・・・・とくん・・・。

いつ途切れてもおかしくないようなかすかな鼓動でした。
これでは花を咲かせることは、もうできないかもしれません。

ヒーローチャオは、とても悲しくなってしまいました。
思わず涙がこぼれてしまいました。

そんな悲しい気持ちのままヒーローチャオは桜の木を見上げていました。




つづく

このページについて
掲載号
週刊チャオ第59号
ページ番号
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この作品について
タイトル
チャオの森のお花見
作者
懐仲時計
初回掲載
週刊チャオ第59号