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人里離れた山の中に、チャオたちの暮らす森があります。
森の木々は、つぼみを大きくふくらましています。
もう咲き出した小さな草花もいくつかありました。
あたたかいお日さまのひかりが、チャオの森をやさしく照らしています。

もう冬のかけらは、どこにも感じられません。
待ちに待った春を、森のあちこちでチャオたちがたのしんでいます。


チャオの森では、もう梅の花がきれいに咲いていました。
なんにんかのチャオが、のんびりと梅の花をながめています。
なかには、あたたかいお日さまのひかりが気持ちよすぎて、ねむってしまったチャオもいました。

梅の花につられてウグイスもやってきました。
チャオたちは、ウグイスのうつくしい鳴き声にききほれています。

あら、またひとりのチャオが、居眠りしてしまいました。
ウグイスの鳴き声が、すてきな子守り歌にきこえたみたいですね。


岸辺には、たくさんのツクシが生えていました。
ツクシを見つけたダークチャオが、つんつんとツクシをつついています。

これは花なのかな?
それとも草かな?
そのうちに大きな木になるのかな?

そんなことをつぶやきながら、つんつんしています。

そのうちに、ダークチャオは一本のツクシを地面から引き抜いてしまいました。
そして、パクリとツクシをたべてしまいました。

ちょっとのあいだ、ポヨがハテナマークになりましたけど、ダークチャオは、すぐに二本目のツクシに手をだしました。
どうやら、ツクシはおいしかったみたいですね。


きょうは、ひなまつりです。
森の広場では、チャオたちのひなまつりの演奏会がはじまっていました。

ごにんのチャオが、「ごにんばやし」のように演奏しています。
ごにんは、ふえ、たいこ、ラッパにタンバリン、そしてマラカスをつかって、げんきに演奏しています。
なんだかちょっとかわった「ごにんばやし」ですよね。

チャオの「ごにんばやし」の演奏にあわせて歌っているのは、トビチャオのなかよしさんにんぐみです。
こちらは、すてきな「さんにんかんじょ」に見えますね。

ざんねんだけど、「おだいりさま」と「おひなさま」はいないみたいです。
でも、たのしい演奏とすてきな歌声にさそわれて、そのうちにやってくるような気がしますよね。


こんな風に春をたのしんでいるチャオたちから離れた森の片すみには、ちょっとしずんだ顔をしたシャドウチャオがいました。
シャドウチャオは小さな人形を取り出して、ちかくの岩の上におきました。

白いうつくしい顔をして、真っ赤な「じゅうにひとえ」の着物を着た人形。
それは、おひなさまでした。

シャドウチャオは、岩の上にかざったおひなさまを、思いつめたように見つめています。
これは、むかしかわいがってくれたご主人さまとの思い出の人形でした。
シャドウチャオは、おひなさまを見ながら、ご主人さまを思い出しているのです。

あかりをつけましょぼんぼりに

ちいさな声で歌う歌は、毎年この日になるとご主人さまが歌ってくれた歌です。

シャドウチャオは、じぶんで決めてご主人さまとお別れしたのでした。
でも、ひなまつりの日がくると、いつもご主人さまを思い出してしまいます。

おはなをあげましょもものはな

いつもはそんなことは思わないのですけど、おだいりさまとはなれてひとりぼっちになったおひなさまを見ていると、ひとりぼっちのじぶんが、なんだかさみしく思えてきてしまいました。

ごにんばやしのふえたいこ

ご主人さまとお別れしたあとの暮らしには満足していました。
でも、ご主人さまへの思いは、まだシャドウチャオの心にのこっていました。

きょうはたのしいひなまつり

シャドウチャオは、このおひなさまだけが、ご主人さまとじぶんをつないでくれていると感じていました。
きっとどこかで、ご主人さまも同じ歌を歌っていると思いながら、シャドウチャオはしずかに歌っていたのでした。

そこへ、いつものように森の中をかけまわっていたソニックチャオがやってきました。
シャドウチャオの歌声はきこえていなかったみたいですけれど、岩の上のおひなさまを見つけると、ソニックチャオはうれしそうに近づいてきました。

すてきなおひなさまだね。
そうだ、みんなにも見せてあげようよ。
きっとみんなもよろこぶよ。

ソニックチャオは、とても楽しそうに話しています。
みんなのよろこぶ顔が目にうかんでいるみたいです。

ソニックチャオは、おひなさまを手に取ると、森の広場へかけだしていきました。
あわててシャドウチャオが追いかけましたけど、うれしくていつもよりはやくはしっているソニックチャオに追いつくことはできませんでした。



つづく

このページについて
掲載号
週刊チャオ第52号
ページ番号
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この作品について
タイトル
チャオの森のひなまつり
作者
懐仲時計
初回掲載
週刊チャオ第52号