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人里離れた山の中に、チャオたちの暮らす森があります。
だんだんと強くなっていくお日さまに照らされて、森の木々の葉っぱのみどり色がこくなっています。
さつき晴れのお日さまが、チャオの森をやさしく見守っています。

あたたかいお日さまのひかりと、みどりの葉っぱにかこまれて、チャオの親子が気持ちよさそうにお昼寝しています。
お母さんチャオとお父さんチャオは、手をつないでなかよく眠っています。
ふたりのあいだでは、こどものチャオがすやすやと安心しきった寝顔を見せています。


そんなチャオの親子から、すこしはなれた木の下では、なんにんかのチャオたちがおしゃべりをしていました。

ねぇねぇ
そろそろ母の日だよね
ご主人さまは、ことしもなにかプレゼントするのかなぁ?

そうだそうだ
もう母の日だよ
ボクのご主人さまも、いつもすてきなおくりものをしてたよ

ご主人さまは、なにをあげるか、すっごくかんがえてたよ
だから、お母さまがよろこんでくれると、うれしそうにしてたわ


そんなみんなのはなし声で、こどものチャオが目をさましてしまいました。
こどものチャオは、目をこすりながら、みんなのはなしを聞いているみたいです。


ご主人さまは、お母さまにごちそう作ってあげるってはりきってたよ
お母さまは、ご主人さまの作ったごちそうをみて、とてもうれしそうにしてたわ
でも、ご主人さまの料理は、なんだかまっくろこげだったなぁ・・・


こどものチャオは、みんなのはなしを聞いて、はじめて母の日のことを知りました。
そして、じぶんも大好きなお母さんのためになにかしたいと思いました。


ボクのご主人さまは、かたたたきしてあげてたよ
お母さまは、とても気持ちよさそうにしてたなぁ
ボクもご主人さまといっしょに、かたたたきしたんだ
お母さまもよろこんでくれて、ボクもとってもうれしかったよ


こどものチャオは、そのはなしを聞くと、となりで寝ているお母さんチャオのかたをたたきました。
かたをたたかれたお母さんチャオは目をさまして、いたいからやめてね、というと、またすぐに寝てしまいました。
こどものチャオは、へんだなぁ?気持ちいいはずなのになぁ?と思っているみたいです。

わたしのご主人さまは、真っ赤なカーネーションの花束をプレゼントしてたわ
とってもきれいで、とってもすてきだったわ
お母さまも、すっごくよろこんでたわ

そうだ、ボクのご主人さまも、お花をプレゼントしたことがあったよ
そのときの、お母さまがいちばんうれしそうだったなぁ


こどものチャオは、みんなのはなしを聞きながら、お母さんチャオを見ていました。
こどものチャオは、お母さんチャオのよろこぶ顔を見たいと思いました。
真っ赤なお花をプレゼントしたら、きっとよろこんでくれるだろうと、こどものチャオは思いました。
だから、こどものチャオは、真っ赤なお花を探しにいくことに決めました。


こどものチャオは、お母さんチャオのそばをはなれるのははじめてでした。
でも、こどものチャオは、お花を見つけるためにひとりでハイハイしていきました。

こどものチャオは、まず桜の木のあるところをめざしました。
桜の花はピンク色でしたけど、あれだけきれいなお花を咲かせていたんだから、きっとあかいお花もあると思ったのです。

でも、桜の花はもうぜんぶ散ってしまっていました。
桜の木には、ピンクのお花のかわりに、みどりの葉っぱがしげっていました。
どうやら、このあたりで咲いているお花は、もうないみたいです。



つづく

このページについて
掲載号
週刊チャオ第65号
ページ番号
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この作品について
タイトル
チャオの森の母の日
作者
懐仲時計
初回掲載
週刊チャオ第65号