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「お母さん、どおしたの!?」
慌ててくるみがかけよってきた。
「く、くるみ。くるみよね。」
「ママ、ゴキブリがでたの?」
弟の和樹も心配そうに裕美を見ている。
「な、なんでもない。なんでもないのよ。
ごめんね。大きな声出して。
お母さん、疲れたみたいだから先に寝るね。」
「うん、あたし達なら大丈夫。ちゃんとパジャマに着替えて、歯を磨いてねるから。」
「じゃ、おやすみ」
「おやすみなさーい。」
裕美は寝室のドアを閉めると、ほぅっと深いため息をついた。
(どうかしてる。子供達がチャオに見えるなんて。
もしかして、育児ノイローゼ・・・?
もう、これもみんなパパがいないのがいけないんだわーっ。会社のばかーーーっ)
そんなことを思いながら 裕美はベットに入ると、すぐに深い眠りについたのだった。
くすくすくす。
くすくすくす。
リビングでは子供達が笑っている。
<あぶなかったね>
<うん、あぶなかった>
<まだ、きずかれちゃ いけない>
<まだだね>
<もうすぐ あのヒトも なかまになるね>
<うん、なかまだね>
きれいな水色のチャオが二人、窓をあけて夜空のむこうにいる仲間達に声をかけた。
空は、春の星座できらめいている。
今はまだ平和なこの世界の、時が静かに流れていた。
おしまい。