─★チャオ喫茶へこんにちは★─ つづき。
それにしても、トランスは随分あのチャオのことが気に入ったらしい。
名前はチャッピー。 年齢不詳。 性別は少年のつもり。
忙しいにもかかわらず、チャッピーはにこにことトランスの接客をしている。
「でもさ、何でここで働いてるの?」
聞かれると、チャッピーは言葉を詰まらせた。
今までスムーズに会話が続いていたのに、急に困ったような顔を見せる。
今度は、ちゃんとトランスと目が合った。 何か、悪いことを言ったのかも知れない。
「あの・・・・お兄ちゃんを・・・・」
「・・・お兄ちゃん?」
妹系の響きに目を輝かせたトランスを殴って、俺は聞き返した。
「あっ、ご主人様のことチャオけれど、ちょっと前にボクは捨てられたんですチャオ・・・それで、生活費稼ぐため
に来てるチャオ」
もう一度顔を見合わせた。 本当に悪いことを聞いてしまっらしい。
「でも、気にしないでチャオ、ボクを捨ててしまう人と一緒にいるより、ここに居た方が楽しいちゃお!」
屈託のない笑顔。
影も、寂しさもない、チャオらしい無邪気な表情が、目に焼きついて離れなかった。
─またきてくださいチャオ─
そういって手を振ったチャッピーは、この上なく楽しそうだった。
チャオにあそこまで演技をさせてしまって悪かったと思ったし、
もう一度あの店には、入りづらい。
夕方に入ってコーヒーとゴーゴードリンクだけで2時間ほども居たせいか、辺りはすっかり暗くなっていた。
暫く二人で黙ってうろうろしていると、唐突にトランスは「なあ」と俺の肩を小突いた。
振り返ると、ある一点を指差す─さっきのチャオ喫茶だ。
いつの間にか、戻ってきてしまっていたようだ。
もうとっくに閉店の時間を過ぎているはずだが、店の奥のほうで明かりがついているのが見える。
「まだ誰か・・・」
「覗いていこうぜw」
トランスは勝手に俺の腕を引っ張って、店の壁に耳をあてた。 怪しい。
「なんか話してるな・・・」
「よく聞こえねぇ・・・・─!」
─"チャッピーの誕生日を祝って~、かんぱ~い!!"
確かに、そう聞こえた。
「─俺ら、乱入していいよな!?」
「いや、それはちょっとあつかま─」
「チャッピーたぁ~ん! おめでとーーーーww」
「ちょっ、待て、コラ─!!」
結局、また来てしまったけれど、
まあそれはそれで─・・・・良いか。