─★チャオ喫茶へこんにちは★─ ☆少々キーワード入り
オタクの聖地として親しまれる(?)秋葉原。
萌えオタク向けの店舗の増加に連日の街頭インタビュー、
そんな空気がアキバ本来のパーツショップを飲み込んでゆくのを横目に、
リビル、本名笠置─つまり俺は奇妙な噂を聞いて、古くからの友人と久々にここにやってきたのだ。
「いらっしゃいませチャオ~。 お二人さまちゃお?」
─★チャオ喫茶へこんにちは★─
「・・・本当にあったんだ・・・」
行儀悪くコップの氷を舌先でいじりながら、
トランス─勿論ハンドルネームで、本名は相澤─はつぶやいた。
「『秋葉原新スポット、チャオ喫茶』─雑誌もうそは書いてないよな」
「驚いたな、本当にチャオばっかりだ」
そう、ここでせわしなく働いているのは色とりどりタイプとりどりの水の妖精、チャオ。
流石に料理は人間が作っているようだが、ウェイトレスはみんなチャオ。
懸命に羽を動かしてテーブルまで行ったりきたり、
「・・・・・なごむよな」
「そーだな・・・・・」
チャオ好きにはたまらない。
開店したばかりとあって、アキバの奥にあるにもかかわらずかなり繁盛していた。
席にありつくまで20分ほどはまったし、まだ店の外にも行列は続いている。
メイド喫茶から派生したとはいえ、女性客も多いようだ。
しかし、その中にチャオも紛れているのはどうかと思う。
しばらくして、俺たちのところにもぱたぱたとニュートラルノーマルのチャオがやってきた。
伝票がやけに大きく見える。
「ご注文は お決まりになりましたちゃお?」
"(かっ可愛いなぁ~・・・♪)"
小首を傾げて、くりくりの目をこっちに向けてくる。
テーブルに軽く手を着いて、体は羽で支えたまま。
こいつら、かなり鍛えてあるな。
「いや、まだです(すっかり忘れてた・・・)」
「じゃあ まってあげちゃうチャオ」
「・・・・は?」
「だってお兄さんは、いまぼくのご主人様チャオ~」
対応に困って、俺はトランスと目を合わせようとした。
が、奴の目は─ばっちり、チャオに釘付けである。
「分かったw じゃあちょっと待っててよww」
そう、こいつは「チャオ狂の相澤」、学生の頃から有名ないわゆる「チャオタ」なのだった。
「さーさーリビル、このコも忙しいだろうから早く決めてやろうぜ~♪」
「・・・はいはい・・・」
水色のメニューを取る。 四隅にハートやらグルグルやらのポヨをあしらったデザインだ。
「えーと、コーヒーか何・・・・か・・・・・・」
~MENU~
○ヤシの実ケーキ 400リング
○ゴーゴードリンク 200リング
○迷子のチャオに捧ぐさんかくの実 700リング
○"まばたきする石像" 時価
「おきゃくさま~、そっちはチャオ用のメニューですチャオ~」
ああ・・・・・そう。
「じゃあこのコーヒーと・・・・お前は?」
「ゴーゴードリンクひとつw」
「・・・・・・・・」
「いいじゃん?」
「かしこまりましたチャオ~」
かしこまるなよ。
ところが案外こういう客も多いのか、チャオは別に気にした素ぶりも見せずにぱたぱたと去っていった。
「でもチャオ用なんて、お前飲めるのか?」
「チャオへの愛でどうにかなるって!」
「・・・・・・・・・・・」
ごめん、お前には敵わない。
ちょっと遅めだったろうか、
彼には重そうなトレイにドリンクを二つのせて、同じチャオがやってきた。
「ご注文は以上でよろしかったちゃお?」
「超よろしいですww」
お前もう黙れよ。
・・・なんて、幸せそうな顔をしている友人にはとてもいえないので、
俺の方が黙ってコーヒーを受け取る。
ゴーゴードリンクとやらは・・・・・・・・形容できない。
「どんな味?」
「チャオの味♪」
・・・・ほら、わからない。
つづく・・・