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「お、ありやがった!」
オレはあるゲーム屋で、探し求めていたファミコンミニのスーパーマリオ(新品)を、ついに発見した!!
これでコンプリートまで、あと二つ。
ついでに、ゲームボーイアドバンスのファミコンカラーも置いてあったので、一緒に購入。まあこっちは、中古だったのだが。

精算を済ました後、オレは店内をうろつく。
この店は、ゲーム屋であると同時に、本屋でもあり、レンタル屋でもあり、ついでに携帯電話も売ってたり。

漫画本のコーナーに向かった時、オレは見慣れない物体を見つけた。
ちょうど膝上くらいの体長の、生命体?だった。
頭は、水滴のような形をしていた。
その下には、丸っこい体で、指のない小さな手、くるぶし以下しかない短い足。
さらに頭の上には、どういう仕掛けなのか、丸い球体が浮かんでいた。

その生命体?は、じ~っと何かを見つめているようだ。
オレはその視線の先に、挙動不審な男子中学生を見つける。
これから、万引きでもしようとでも言わん気な感じだ。
オレは、バカだなあと思い、その場を後にする。

しばらく店内をうろつき、オレは店を出る。

「出たちゃおね。」
その時、どことなくかわい気な声がした。
オレがキョロキョロすると、オレの脇からすっと、さっきの生命体?が通り抜け、オレの前方に立ちはだかる。
そしてその生命体?はなんと、警察手帳を見せつける。
「神奈川県警秘密捜査官警視正、チャオ刑事ヅーラン!」

…、ここ、神奈川じゃねえって。管轄外じゃん。

戸惑うオレをそっちのけで、チャオ刑事と名乗る生命体?は続ける。
「特殊チャオ警察法、第一条!チャオ刑事は、いかなる場合でも、令状無しに犯人を逮捕することが、出来るちゃお!
 第二条!チャオ刑事は自ら犯行現場を目撃し、かつ、犯人の身柄を確保した時に限り、既存の法律にとらわれず自らの判断で、犯人を処罰することが、出来るちゃお!
 第二条補則、場合によっては、抹殺することも許されるちゃお!」

…おいおい、裁判無しか?最高裁まで争わせろよ。
オレは、いかにも憲法違反なその法律にあきれる。
その時だった。オレの横を、誰かが通り過ぎていく。さっきの男子中学生だ。
「逃がさないちゃお!」
チャオ刑事は男子中学生の後ろから、男子中学生の左足にしがみつく。
バランスを崩した男子中学生は、そのままこけて顔面を打つ。
最近、転ぶ時に手をつかないお子さんが増えてるらしい。
「貴様、かばんの中身を見せるちゃお!」
チャオ刑事は中学生のかばんを分捕ると、中から漫画本を取り出した。

なんだ、オレじゃねえんだ。
オレはそんなやりとりを横目に、その場を後にした。
車のエンジンをかけると、暖気がてら、そのやりとりを見物することにした。

「貴様のようなヤツは、学校名・氏名を店内に張り出すちゃお!」
戸惑う中学生。
そこへ、パトカーがやってきた。
パトカーから降りた警官はなんと、チャオ刑事に敬礼する。
「チャオ刑事殿、お勤めご苦労様であります。あとの処置は、私めにおまかせください!」
警官の言葉に、中学生の顔が青ざめる。
「ご、ごめんなさい。許してください。」
中学生は土下座する。
「ふんちゃお。ごめんですんだら、警察はいらないちゃお。」
チャオ刑事は土下座する中学生の頭をぐしぐしと踏みつける。
「まあまあ、チャオ刑事殿。この子も反省してるようですし、あとは私が処理しますから。」
警官は、そんなチャオ刑事をなだめる。
「じゃあ、こいつのことは、お前に任せるちゃお。」
チャオ刑事がそう言うと、中学生は警官に脇をかかえられ、店内の事務室に連れて行かれた。

な~んだあ。名前張り出さないのかあ。
コトの一部始終をながめ終わり、オレは車を発進させようと、パーキングブレーキを解除しようと手を伸ばす。
その時だった。
助手席のドアが開き、なんとチャオ刑事が乗り込んできた。
「お前、逃げなかったちゃおとは、いい度胸ちゃおね。」
「はあ?なんですか?」
オレはいきなり現れたチャオ刑事に、びっくらこいた。
そんなオレを尻目に、チャオ刑事は言う。
「お前、あの子が万引きしようとしてたのに、気が付いてたちゃおね?」
「へ?」
こいつ、何が言いたいのだろう?オレはその真意を図りかねる。
「お前が止めていれば、あの子が犯罪に手を染めることもなかったちゃお!」
う~む、そんなこと言われてもなぁ。
「お前はあの子の未来を、奪ったちゃお!
 特殊チャオ警察法、第六条! 子供の夢を奪い、その心を傷付けた罪は、特に重いちゃお!!」

このページについて
掲載号
週刊チャオ第141号
ページ番号
1 / 2
この作品について
タイトル
チャオ刑事ヅーラン
作者
あさぼらけ
初回掲載
週刊チャオ第141号
最終掲載
週刊チャオ第142号
連載期間
約8日