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夜中の三時に、ふと目が覚める。
二度寝しようかとうつらうつらしている時、オレはあることに気が付く。
「今日、ゴミの日だ。」
オレは布団から飛び起きると、玄関を開けて外を見る。
ゴミ回収場所には、すでに幾つかのゴミ袋が置いてある。
オレは先客の存在を確認すると、90リットルの透明ゴミ袋を持ち出した。
そして、オレがゴミ袋を回収場所に置いた時だった。
突然、背後からスポットライトを当てられた。
思わず振り向くと、地面すれすれの高さからのその光りは、ポケバイのヘッドライトだった。これは、後で気が付いたのだが。
そしてそのポケバイの横に、変な物体があった。
いや、生命体なのだろうか?
水滴みたいな頭をして、それに見合ったような丸い体に、短くて丸っこい手足。
そしてどういう仕組みなのか、頭の上に小さな球体が浮かんでいた。
その生命体は、右手に警察手帳を持ち、歩み寄ってくる。

「北海道警秘密捜査官警視正チャオ刑事カツウラ!」
言葉を発するその物体に、オレは少しパニックになる。
夜中のしゃべり声は、結構響くものである。
そして、この状況。
これは、なにかのテレビ番組の撮影としか、考えられない。
相手がタレントやアナウンサーなら、「ファンなんです。」って握手でもしてもらえばいいのだが。
これ、なんなんだ?
そんなオレを尻目に、チャオ刑事は続ける。

「特殊チャオ警察法、第一条!チャオ刑事は、いかなる場合でも、令状無しに犯人を逮捕することが、出来るちゃお!
 第二条!チャオ刑事は自ら犯行現場を目撃し、かつ、犯人の身柄を確保した時に限り、既存の法律にとらわれず自らの判断で、犯人を処罰することが、出来るちゃお!
 第二条補則、場合によっては、抹殺することも許されるちゃお!」

オレは、ブロック塀の穴や曲がり角の向こうに、カメラマンがいないか探して見る。
どうやらいないらしい。
が、後をつけられる可能性も否定出来ないので、オレは遠回りして帰ることにした。
チャオ刑事の横を通り過ぎた時だった。
「逃がさないちゃお!」
チャオ刑事は後ろから、オレの右足にしがみついてきた。
オレは、思わずバランスを崩す。最近、転ぶ時に手をつかない若造が、増えてるらしい。オレもそのクチだ。
オレは左足をすり足で動かし、踏ん張りを利かす。
そして、チャオ刑事のしがみつく右足を前に踏み出す。
その時、オレはチャオ刑事の足を踏んづける。それも思いっきり。

その瞬間、チャオ刑事は吹き飛んだ。
弾力性に富んだゴムマリ。いや、まるで反発しあう磁石の様だった。

ブロック塀に激突したチャオ刑事は、そのままずり落ちる。
う~む、なんで今度は弾まないんだろか?
地面までずり落ちたチャオ刑事は、後ろに倒れそうになるが、なぜか足が変な滑り方をすると、うつぶせに倒れる。
そして、頭の上の球体がなんと、渦巻き状に形態を変える。
うわ~、芸が細かいなぁ。
しかしすぐに球体に戻ると、何事も無かったかのようにすっくと立ち上がる。
オレはとりあえずほっとするのだが、なんか様子がおかしい。
よくよく見ると、こいつ号泣してやがる。
オレは、もう一度辺りを見回す。どうやら撮影スタッフはいないらしい。
ならば、こいつをこのまま放っとく訳にもいかないだろう。
オレはポケバイのライトを消し、こいつを部屋へ連れ帰ることにした。
で、号泣するチャオ刑事を抱っこした時だった。
「やんやんやんやん。」
こいつ、瞬時に泣き止むと、目をつむったまんま体をくねらせる。
思わずオレは、チャオ刑事を落としてしまった。
しかし、地面にしっかりと着地すると、また号泣を始める。
オレは、また抱っこしてみた。
「やんやんやんやん。ん~っちゃ!」
またまた体をくれらせて嫌がる。そんなチャオ刑事を、降ろしてみる。
また、号泣を始める。
なんなんだ、こいつは!
やっぱ放っとく?そんな考えが頭をよぎるが、やはり放っておけなどしない。
オレはも一度抱っこすると、暴れるチャオ刑事をなんとか落とさないようにと、部屋へとかけこんだ。
部屋に入ってから、オレはあることに気が付いた。
こいつ、沓履いてないや。てゆうかひょっとして、裸か?
寒くないんか?
暴れるチャオ刑事を抱っこするのも限界だったので、そのまま室内に落とす。
またまた号泣し始めるチャオ刑事。
オレは、そんなチャオ刑事に目線を合わせるようにしゃがみこむ。

抱っこしてあやすことは、無理か。ならば…。
オレは、チャオ刑事の頭をなでてみる。
ポン!
突然こ気味いい音が響くと、なんと頭の上の球体がハート型に形をかえ、チャオ刑事は泣き止んだ。
オレはびっくりして思わずなでる手を引っ込めると、ハート型はまた球体に形を変える。
オレはまた、頭をなでなでする。
頭の上にハート型を浮かべたまま、気持ちよさそうな表情で、両手でリズムを取るように、体を左右に揺らし始める。

オレは、なでるのを止める。
しばらくはハート型を浮かべたまま体を左右に揺らしていたが、またまた頭上の物体は球体に戻る

このページについて
掲載号
週刊チャオ第142号
ページ番号
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この作品について
タイトル
チャオ刑事カツウラ
作者
あさぼらけ
初回掲載
週刊チャオ第142号