チャオカラテ道場での小さな話

チャオカラテ道場での小さな話

俺は、お金持ちの家のチャオだった。
毎日ぜいたくな実を食べて、とても豊かな生活を送っている。
ちなみに、俺は、チャオカラテの道場にかよっていた。
俺には似合わない、ちいさくちっぽけな道場だったが、そこの師範がなかなか評判がよく、世界に名を広めた人だったので、まあこれでもいいか、と思っていた。

でも最近すこし嫌になってきたんだな、道場に通うのが。
なんせ、毎日毎日いい小動物や高級カオスドライブをなんかいもキャプチャしてもらっているのに、ちっとも強くなれない。
それで俺は最近しばしば週3回の道場通いをさぼっていた。

そんなある日、俺は熱心にトレーニングしているチャオをみつけた。
あいつは、たしか貧乏なノラチャオだ。
俺は、あいつのことが気に食わなかった。
貧乏で、みすぼらしい、何の進化もできていないただのノーマルタイプだったからだ。
でも、あいつはいつも大会で1位とかをとっていて、この道場じまんの生徒だった。
でも、あいつは小動物やカオスドライブを買うリングがなく、スキルは俺より低いはずだった。
俺らはお互いにあまり話したりはしなかったが、俺はどうしてもどうしてそんなに強いのかが気になって、そいつのほうに駆け寄り、思い切ってこう聞いてみた。
「なぁなぁ、お前、俺と違ってあんまし小動物キャプチャしてねーだろ?なのになんでそんなにつえ~の?なんかコツとかヒミツとかあんのか?」
そいつはびっくりしたようにふいにこっちをふりむき、少し考えてこういった。
「う~ん、ふだんあんまりキャプチャできないから、その分いっぱい努力したんだ。そのおかげかな。」
そいつはまだ言葉を続けた。
「キャプチャしたって、せっかくの能力がつかえなきゃいみないでしょ?そのためのトレーニングさ。」
「ふぅん....そっかぁ.....」

最初はまだ俺はあんまりあいつの言葉を信じていなかった。
おぼっちゃまな俺にそんな努力なんて言葉は関係ないと思ったのだ。
でもあいつはどんどんトレーニングしていき、どんどん強くなっていった。
本当に実力がついている。
それで俺もちょっと家でもトレーニングしようと思って、ご主人様にトレーニング部屋をつくってももらって、毎日1時間ぐらいカラテの型やパンチや回し蹴りを練習してみた。
マジに、死に物狂いですることもあった。
でもそれだけでも足りないと感じて、いいジムにも通わせてもらった。
それをつづけるうちに、本当にいままでキャプチャしてきた小動物やカオスドライブのちからが身についたように感じられた。
そして俺は、ずっとトレーニングを続けていくうちに、いつのまにかトレーニングすることが趣味になっていった。
それは、俺が生まれて初めてほんとうに努力したことだった。

ある日、ジムでのこと。
俺は、今日もジムの階段を駆け上がり、扉を開けると、奥のほうで、たくましい男となにか話しながら休憩しているあいつを見つけた。
俺はそいつのほうに駆け寄り、
「あれ?お前どうしたの?ここのジム来てたんだ!」
と話しかけた。
するとそいつは嬉しそうに、
「うん、前まで別のジムに通ってたんだけどね、この人が─」
そいつはたくましい男とにこっと顔を見合わせた。
「この人が、ボクがたくさんいろいろ練習しているから、そこを気に入られて、ボクを飼ってくれるようになったんだ。でね、このジムに通わせてくれてるの。」
そいつは本当に嬉しそうな顔をして話していた。
俺はそいつ達とジムでトレーニングを終えて、「やっとこっちに運が傾いてきたかな。これからもカラテがんばろーね!」と言われて家に帰った。

俺は、今日もいやいやではなく、さぼらずに道場に行った。
俺は、あいつと一緒に週3回から毎日にかえて道場に通うことにしたのだ。
稽古が終わって、俺とあいつが帰るしたくをしていたとき、師範が俺らのところにやってきて、
「なぁ、お前ら、今度の大会、出るか?」
と、話を持ちかけてきた。
俺は大会に出ないかと誘われたのは初めてだった。
しかも今度の大会は全国で行うものだったので、あいつも初めての経験だ。
俺らは顔を見合わせ、にっこり笑うと、
「もっちろん、出ます!」
と声をそろえていった。

つづく☆

このページについて
掲載号
週刊チャオ第106号
ページ番号
1 / 2
この作品について
タイトル
チャオカラテ道場での小さな話
作者
ぺっく・ぴーす
初回掲載
週刊チャオ第106号