CM編

 この違和感を感じ始めたのは、いつの頃からだったろう。昨年十二月にステーションスクエアを死の海にした液状生命体、カオス。今思えば、あれが一つのきっかけだったような気がする。人が、チャオが、一生懸命に生きようとしている。自分も何か助けになることをしたい。そして実際、あの時なら、その望みを果たすことができた。いくらでも助けを求めている場所があって、無我夢中にそれを追い求めていっているうちに、それは終わった。

 驚くべき早さで復興を遂げたステーションスクエアには、もうあのときの悲惨な状況の面影はほとんど残されていない。これで良かったのかもしれない。だけど、私の心の中に植え付けられた小さな種は、春先から静かに土を盛り上げて、今にも芽を出そうとしていた。
 もっと人々の実感の伴うことをしてみたい。

 ——いや、しかし本当は、大学に入学した時から気付いていたのかもしれない。ここが自分のいるべきところではないということに——

 単なるわがままかもしれない。現実から目を背けようとしているだけなのかもしれない。でも、複数の選択肢を天秤にかけたときに、いつだってこの選択肢が一番にくるのだ。
 決断できない。目の前は不安でいっぱいだった。気がつくと、今日も街をぶらぶら。まずいな、と私は思った。これじゃ本当に現実逃避しているだけじゃないか。
 そのチャオに出会ったのは、そんな時だった。

 ——あの子に夢を賭けてみよう。それは、私の独善的なアイディアだけど、あの子がいれば、きっと、全てがうまくいく。


チャオガーデン 聖誕祭公開予定

このページについて
掲載日
2009年11月12日
ページ番号
5 / 23
この作品について
タイトル
チャオガーデン
作者
チャピル
初回掲載
2009年7月19日
最終掲載
2009年12月23日
連載期間
約5ヵ月7日