書評編
チャオ・ブームの意味を問う
著者はあくまで自分を売り子とすることに徹したようだ。小説として読むには味気ないし、かといって自叙伝とするにはテーマが絞られすぎている。このタイミングでこのエピソードを選択したということに、何らかの意図を感じずにはいられない。
舞台は三年前のステーションスクエア。タイトルの通り、中央駅に隣接するチャオガーデンを中心に話は進んでいく。本作は日記からの抜粋という形を取っている。前半はパンフレット作りの、後半は就職活動の話を通して、チャオガーデンの内実が多面的に描かれていく。
そこで明かされるのは、ガーデンでちょっと異質な行動をしたチャオの、悲しい末路である。チャオガーデンは微妙なバランスの上に成り立つ施設だ。近年のチャオ・ブームに伴って生まれたねじれた社会構造——すなわち、チャオと人とは平等であるという建前があるのに、実も情もそれに伴っていないという現実が、著者の身に大きく降りかかる。
本作の無視できないところは、これが単なる問題提起にとどまらず、作中できちんと著者なりの答えを示しているところにある。チャオをよく知る人には、考え方の一つの指標として、そうでない人には目の前に迫った問題提起として読んでもらいたい。チャオガーデンの問題は、やがて色々な分野で起こりうる可能性を秘めている。
評者:CPL