エピローグ

<エピローグ>


俺達が銀座のデパートの屋上に戻ってから数分後、北川佑香が1人だけ戻ってきた。
前にも少し言ったと思うが、俺達は東京郊外の某市に住んでいる。ここなら地下鉄から某私鉄に乗り換えれば何とか帰れるぞ。
という訳で俺達は、無事に帰宅することができた。
(雪の影響で電車が遅れて、それはそれで大変だったが、あっちの世界で体験した事に比べたらそれぐらい些細なもんだろ)


そして、冬休みに入り、新年を迎えた。
センター試験まで2週間を切ったこともあり、さすがに北川部長は部室に姿を現さなくなった。


ところで、この世界に戻ってきたのがどっちの北川佑香なのかは、敢えて聞かない事にしている。
これは、月島先輩と2人で相談して決めた事だ。

銀座に戻ってきた時の北川佑香は虻石のネックレスをしていたが、そんなもの、俺達が移動した後に渡してしまえば俺達には分からないからな。


センター試験が終わると、北川部長は部室に少し姿を見せるようになった。
まだ二次試験が残っているが、少し余裕ができたのだろう。

だが、北川部長は、以前みたいに俺達に無茶な命令をすることは無くなった。
性格も、少し穏やかになったかな。元気さは12月までと変わらないが。
どっちの北川佑香にしろ、あの時の体験で少し変わったのかな。
人数確保のために無理矢理入部させられていた95人の幽霊部員も、全員自主退部扱いにしてくれたし。

とにかく、俺達にとってはラッキーなことこの上なかった。もう怯える必要はないんだからな。



そして、春―――


【俺】「2年生か・・・そういや、チャオ同好会どうすんだろ?」

北川部長は無事「チャオラーの聖地」京都の大学に合格を果たし、早くもキャンパスライフを楽しんでいるらしい。
だが、問題は高校のチャオ同好会。元々北川部長の暴走で設立された同好会だから、解散してもいいんだけど、な。

・・・なんか名残惜しいんだよなぁ・・・
去年の4月には考えられなかった話だ。

放課後、気がつくと俺は、チャオ同好会の部室にいた。

【俺】「あ・・・」
そこには、月島先輩が。そういえば、3年生になったのか。
【月島】「やっぱり・・・来ちゃいますね・・・」
ニコリと笑う。やっぱ、カワイイよなぁ。


俺達2人はそのまま、部室に入った。
テレビやゲームキューブ、それにおびただしい数のチャオグッズは北川部長の私物で全て京都に持っていったため、部室はガランとしている。
唯一残っているのが、ネット環境完備のパソコン。合格祝いに最新型を買ってもらったからいらないのだそうだ。

【俺】「これから、どうします?」
【月島】「チャオ同好会を続けるか、名前を変えて別の活動をするか、解散するか・・・」
【俺】「折角だし、解散はやめておきません?色々あったけど、やっぱり思い出がありますから。」
月島先輩と一緒にいたいって下心も少々。

【月島】「そうですね・・・でも、2人じゃ同好会は存続できませんから、やっぱり何か新しい活動をした方が良さそうですね・・・」
【俺】「同好会の継続条件は5人でしたよね?あと3人か・・・」
去年はあのツンデレ生徒会長相手に脅迫まがいの行為でもったようなもんだが、もういないからな。今度こそマトモに存続させねぇと。

【月島】「ええ。だけど、新しい生徒会長さんは私の友達で、お願いしてみたら、継続条件を3人にできそうなんです。」
そりゃラッキー。先代みたいに部長と会長が犬猿の仲じゃ色々と困るからな。そのためにエライ目にも遭ったし。

【俺】「でも、いずれにせよチャオじゃ無理だよな・・・どうします?」
すると月島先輩は、思いついたようにこう言った。
【月島】「『文芸部』ってのはどうでしょう?ほら、私達が次元移動した先って、チャトル大学付属高校の文芸部だったでしょ?」
【俺】「そういえば、ウチの高校文芸部ないっすね。・・・そうしますか!」

こうして、晴れて俺達は「文芸部」として再スタートすることになった。これなら部員も集まるだろう。
読書は正直あんまり好きじゃないが、まぁいいじゃねぇか。コッソリ漫画でも読もっと。

【月島】「・・・ところで、やっぱり部長って、私になっちゃうんですか?」
【俺】「そりゃまぁ、当然。お願いしますよ、月島部長!」
【月島】「そうなるんですね・・・それじゃ、副部長さん、これからもよろしくお願いします!」
【俺】「ぐはっ!」

そりゃそーだ。今んとこ部員2人しかいねーんだもん。俺が副部長じゃん。はっはっはー。


・・・とまぁ、これで「めでたしめでたし」のはずだったんだが。
事件は、その翌日起こった。

俺と月島部長が2人でパソコンで部員募集のチラシを作っていたら、ドアをノックする音が。
【月島】「どうぞー!」

ドアを開けて入ってきたのは、新入生の女子生徒。ショートカットでメガネをかけて、物静かな感じ。
うん、いかにも文芸部にいそうなタイプだ。
【俺】「入部希望っすか?」

【新入生】「あ、あの、ここにチャオ同好会があるって聞いてきたんですけど・・・
      私、小学生の頃からチャオが大好きで・・・」


・・・どーしよっかなー、おい。
俺は月島部長と共に苦笑いを浮かべながら、頭を抱えた。


                            完

このページについて
掲載号
週刊チャオ第249号&チャオ生誕8周年記念号
ページ番号
12 / 12
この作品について
タイトル
聖誕祭記念特別読み切り「チャオ同好会Forever(フォーエバー)」
作者
ホップスター
初回掲載
週刊チャオ第249号&チャオ生誕8周年記念号