チャオ同好会Extended(エクステンデット)
俺が高校に入学して、最初の夏休み。思いっきり遊びまくるぞっ!
・・・と思った矢先。
あの部長め、とんでもないことを口走りやがった。
【北川】「もうすぐ夏休みっ!夏休みといえば、そうっ!
『チャオラーの聖地』こと、京都巡礼よっ!!」
・・・今、何て言った?聖地?京都?ナンデスカソレ?
特別読みきり・チャオ同好会Extended(エクステンデット)
えっと、月島先輩の説明によれば。
京都には、チャオ育成研究史に名を残した有名なチャオラーが複数いて、一部チャオラーから「チャオラーの聖地」と呼ばれてるらしい。
んで、同好会では毎年夏休みに京都に1泊2日で「聖地巡礼」に行くのが恒例らしい。
【俺】「・・・日程とかは決まってるんですか?」
【北川】「もちろん!詳しくはこのプリントを参照ね。」
と、部長は俺に1枚のプリントを叩きつけた。
なになに?
・・・お、この日はちょうど家族旅行するって親父が言ってたなぁ。よし、上手く口実にして休むか。
【北川】「あ、言い忘れたけど、休んだらどうなるか、分かってんでしょうねぇ?」
はい。京都行きます。顔笑ってますけど、目が笑ってません。マジで。
とりあえず俺はプリントの続きを見る。
京都までの交通費は自己負担。はぁ、また出費か。たまには小遣い自分のために使いたいよ。
ちなみに俺の高校は東京郊外にある。つまり新幹線だ。
唯一の救いは、宿泊は月島先輩の親戚がやってる旅館なのでタダでいいらしいってことか。この上宿泊代まで自己負担なんて言われたらマジで殺意抱きそう。
そんなこんなで、家族に対して何とか言い訳をしつつ、その日がやってきた。
まずは某私鉄で東京駅まで向かい、新幹線に飛び乗る。
夏休みで混んでいたが、北川部長は無理矢理自由席を奪い取った。
多分この瞬間が、俺の人生の中で唯一「北川部長がいて良かった」って思った一瞬だと思う。2時間半も新幹線で立つのはごめんだからな。
(最も、その2時間半部長のチャオ自慢を聞かされた訳で、それはそれで苦痛だったが)
で、京都駅。構外に出るや否や、
【北川】「聖地京都、到着っ!!」
大絶叫。助けて下さい。俺達まで変人に見えるじゃないですか。ほら、そこのサラリーマンこっち見てるし。
【俺】「・・・で、どうするんですか?」
そこで俺は、根本的な疑問をぶつけた。なにせプリントには具体的な日程は何も書かれていないのだ。
まさか、その有名なチャオラーさんの家に押しかけるとか、しないだろうなぁ。
【北川】「聖地の空気も吸ったし、京都観光よっ!」
【俺】「えっ、なんか特別なこと、しないんですか?」
【北川】「そんなのできる訳ないじゃない、誰がどこに住んでるのか分かる訳ないのに。」
部長ならとんでもない手段使って調べ上げてそうだが、とりあえず助かった。
・・・ん?待てよ?普通に観光ってことは、有名な寺とか巡るんだよなぁ?
しまった、それはそれで大問題だ。
俺、中学の修学旅行が京都で、有名な場所は大体見てしまっているのを忘れていた。
寺社マニアじゃあるまいし、2回も見る気が起こるはずもない。
つまり、延々とつまらない時間を過ごすハメになる訳だ。それくらいなら清水の舞台から飛び降りたい。マジで。
・・・とは思ったものの、さすがにまだ死にたくはないんで丸2日部長の京都観光に付き合うしかないか。
ああ、部長がバスに飛び乗ってるよ。ついて行くしかない。
そんな訳で、俺は人生2度目の京都観光をすることになった。
金閣、銀閣、嵐山、祇園、以下省略。全部見たことあります。
その途中、部長が先走っているスキに、俺は月島先輩に話しかけた。
【俺】「・・・俺、中学の修学旅行で全部見てるんすけど・・・」
【月島】「私もです。というか、あの辺の中学生ってみんな京都じゃないんですか?」
【俺】「という事は、北川部長も?」
【月島】「たぶん。というより、去年もここを観光してますし。」
そうだった。月島先輩は2年生、北川部長は3年生。ということは、まさか部長、京都は4度目?
【俺】「・・・部長、飽きないんですかねぇ?」
【月島】「そうじゃなくて、単に忘れてるんだと思いますよ。
あの部長、チャオ以外の記憶がほとんど続かない人ですから。」
・・・恐ろしや。それしかコメントが出ない。
ようやく夕方になり、俺達は旅館へ。
夏休みということで宿泊客は多かったが、結構くつろげる旅館だ。まぁ、月島先輩の親戚を悪く言う訳にもいかないが。
さて、食事も食べたし温泉にも入ったし、後はのんびりテレビでも見ながら楽しいひと時を・・・って、ちょっと待ったっ!?
<続く>