~店長せんせのばやい~
「じゃあお願いします。夕方には引き取りに来ますので」
「あいよ、そこ置いてけ」
「…」
僕は朝、いつもどおりチャおを幼稚園に預けて学校へ向かった。今日のクラスの担任は闇の取引所の店長。ちょっと不安だ。
…
クラスでは、早速今日のお稽古が始まっています。今日のお稽古は歌のようです。店長はちゃんと教えてあげる事ができるのでしょうか…?
「せんせー。何の歌歌えばいいチャオ~?」
「しらん、適当に歌ってろ」
…
「せんせー。せんせーに歌って欲しいチャオ!」
「俺は歌は歌わねぇよ」
…
「店長、エロ本見せて」
「15年早ぇよガキが」
「ちっ…」
…
こんな調子です。
教室には、子供チャオの歌声があちらこちらから聞こえてきます。
「ぷーぷれたんとーはーれたとー♪ぷーぷれとんぷーほーみーふー♪」「チャチャチャー♪チャチャチャー♪チャーチャラチャー♪」「せーかいーにひーとーつだーけーのはーなー♪」「お前ら、俺の歌を聞けェェェ!」
「…五月蝿ぇな、俺はちょっと出てくる。ゴンゲー、後は頼んだぞ」
「ゲゲ!?」
店長先生はゴンゲーと呼ばれた半漁人に仕事を任せ、教室を出てしまいました。
教室の外で、店長先生は座り込んでしまいました。
「ふぅー」(煙草をふかす)
「ガキのお守りってのも、案外暇なもんだな」
店長が何にもしていないだけなのに、ぶつぶつ愚痴ります。
と、教室から一匹のチャオが出てきました。
「…ん、なんだ?何か言いたい事なら半漁人に言ってくれ」
「…」(じーっ)
子供チャオは、店長先生のことをじっと見つめます。
「…なんだ、はっきり言え」
「カッコいいチャオ…」
「あん?」
「サングラス、カッコいいチャオー…」
「…」
店長先生はロッカーまで歩いていき、がさごそと何かを取り出しました。
「ホラ、貸してやる」
サングラスでした。
「いいチャオか!?」
「おう」
「わーいチャオー!ありがとうチャオー!」
子供チャオはすぐサングラスをかけてみました。なんだか少し暗いです。でも、とってもかっこよくなれた感じがします。
「みんなに見せてくるチャオー!」
子供チャオは急いで教室に戻り、ソレを見たほかの子供達は大騒ぎです。
「凄いチャオ!」「カッコいいチャオ!」「どこで手に入れたチャオか!?」
子供チャオはぜーんぶ説明しました。店長先生のところには、あっという間に子供チャオが集まってきました。
数時間後…。
「失礼しまーす、チャオ引き取りに…どわあっ!」
「おう、お帰り」
僕はビックリして叫んでしまった。サングラスをつけた子供チャオ達の大群に出迎えられたからだ。
「な、なんですかコレ?」
「俺がお前んトコのチャオにサングラス貸してやったらよ、他の奴らも貸して欲しいって言うから、俺のスペアかしてやったんだよ」
「柄悪いですよ…」
「ま、いいんじゃねーの?」
そういって店長先生は煙草をふかします。
「ふぅー」(煙草をふかす)
「ぷぅー」(煙草をふかす真似)
僕の見ている前で、子供たちはいっせいに煙草をふかす真似をして見せた。
「ヘンな事教えないでくださいよ…」
「…ま、いいんじゃねーの?」
「ふぅー」(煙草をふかす)
「ぷぅー」(煙草をふかす真似)
チャオは歌は覚えずに煙草をふかす真似を覚えました。また来ましょうね。