『僕の決意』
今の、この僕の胸の中にある情熱は、
外の世界にある、全てのものに構わずに、胸を張ってよいものなのだと僕は思う。
もし仮に「本当にそう思うか?」と尋ねる人がいたとしても、
常にいつでも、それへの答えは「YES」なのだ。
そう決めたんだ。
だから、そうに決まっているんだ。
それは、なんだかとっても刺激的な気分。
つまり、今夜はね、僕の中に起こる事となった・・・
そうだなあ、簡単な言葉で言えば「革命」だね、
その革命の前夜となったわけだ。
そう、革命が起こってしまうということは、もう決まったのだ。
もう、決まったことなのだ。
「僕はチャオを飼う」
それは、こんなふうに始まったんだ。
僕は、何もする事がなくって、雑誌をパラパラとめくっていたんだよね。
そうするとだ、それの姿が僕の目に留まったんだ。
チャオの可愛らしい姿が、僕の目に焼き付いてしまったんだ。
その姿を見た瞬間、僕の頭の上で、小さな稲妻が光ったんだよ。
その時に、僕の世界に、革命が起こり始めたんだ。
そしてその革命が起こるまでの間を、僕は秒読みをしながら待った。
そしてそして
「僕はチャオを飼う」
ということが、鉛筆を転がすことによって決まった瞬間、
ちょうどその瞬間、今度は夜空に大きな稲妻が光ったんだ。
だから。
だから僕は、僕に周りにある全ての柵(しがらみ)をふりほどく。
そう、例えば今の僕が住んでいるこのアパートの、この狭い部屋では、
動物を飼う事は許されていないのだけれども、
そんなものは、すでに僕の中では「無かった事」になっている、というわけだ。
僕の外にある世界の全てがどうなったところで、
僕は僕として僕のままに、揺るぎなく存在しているのだということを、
外の世界に示したいって僕は思っているんだ。
そして僕はそれを、チャオと一緒に現実のものとするんだ。
ただそれは、僕がずっと考えていたコンセプトだったわけなんだけれども、
でも、僕の内にある世界には、不甲斐ない(ふがいない)もの達もまた、
存在していたものだから、なかなか現実にはできずにいたんだ。
けれど、僕はそんな、僕の中にある不甲斐ないもの達を全て、
そばに転がっていた段ボール箱の中に、全部押し込んでしまうことにしたんだ。
そして、その箱にはバンドエイドで封をすることにしたんだ。
そして今夜、僕は扉を開ける。
チャオを飼うことで、僕は僕の目の前にある扉を開く。
そしてその扉の向こう側には、
チャオと一緒に過ごす「未来」がびっしりと詰まっているというわけだ。
僕と、それから明日この部屋にやってくるはずのチャオとが持つはずの情熱は、
もし例えこの部屋では無理だったとしても、
(だって、この部屋でチャオを飼う事は禁止されているから)
必ず何処かで、その情熱は強くなれるはずなのだ。
もし誰か「本当にそう思うか?」と尋ねる人がいたとしても、
常にいつでも、それへの答えは「YES」なんだ。
そう決まっているのだ。
それはとてもスパイシーな気持ち。
シアワセにたどり着く為に用意されているはずの、
人生の近道ってやつは、いつでも渋滞をし続けている。
だって、みんなその道が大好きなんだからね。
そしてそんな道の上で僕もまた現(うつつ)を抜かしていたわけだ。
そんな僕が、かつて過ごしていた、あの日々もまた、
その、世の中の多くの人が大好きな道の上で、
凍って固まったままになっているわけなんだけれど。
でも、それじゃあ、今僕の目の前にある扉を開けることは、
チャンスってものなのだろうか?
それともピンチってやつなんだろうか?
それでも、と僕はアパートの部屋のドアを開けて、そして外へと飛び出した。
例えもし、この先の世界に「ピンチ」しか待っていなかったとしても、だ、と。
そして真夜中の国道を駆け足でさまよいながら、僕は決意を固めたんだ。
生ぬるい夜の風が吹いているけれど、
僕の決意は、そんな生ぬるいもんじゃない。
多分ね、今までの僕は「自由」と表現される場所にいたのだろう。
この、失うものが何もない、失えるものが何もない、というのは、
自由と呼ばれているやつなんだろう。
確かに今の僕には、全く何もない。
失うものなんて、何もない。
けれども、僕の中にはギッシリと自信がつまっている。
そしてそれから「未来」ってものだってシッカリとつまっている。
もしかすると切ない日々と出会う事になったりもするかもしれない。
でも、それだって悪くない。
僕はチャオに逢いたいんだ。
僕はチャオと一緒の時間を過ごしてみたいんだ。
それだけなんだ。それだけだから、そう決めたんだ。
多分、そんな奴はいないと思うけど
「本当にそう思っているのか?」と尋ねる人がいたとしても、
常にいつでも、それへの答えは「YES」なのだ。
そう決まったのだ。
(「つづき」に続く)