第二百二十二話
一旦フォルたちから離れて、レスト達のほうへ・・・
【クレイスタワー五階】
四階からの階段を上ったすぐの場所に、三人はいた。
シン「うっ・・・ぅう・・・ピンキーさん・・・」
シンは目に涙を浮かべ、地面に手を着いて俯いていた。
カザフ「・・・っ!」
カザフも拳を握り締め、目を瞑り、歯を食いしばっている。
その場で唯一平常心を保っていたのは・・・
レスト「・・・」
レストだった。
レスト「・・・行こう。このままここにいてもいずれは奴らに襲われる。」
レストが歩を進めると、カザフもそれに黙って着いていく。
そしてシンも、涙を拭い、階段を見つめながらも、遅れた分早足で二人の後を追った。
レスト「まず、この回数の区分は無視してみんなと合流しよう。下は危険だから上に向かう。」
カザフ「ああ、わかった。」
シン「・・・はい。」
二人の返事はやはりどこか暗い。
レスト「・・・助ける方法がないわけじゃないだろう。その為にもまずは戦力を整えることが先決だ。」
レストの言うことにも一理ある。
だが、ここでシンが意見した。
シン「ですが!あの状態で今からみんなと合流しても戻ってきた頃には無事かどうか・・・!」
カザフ「確かに俺達もできればそうしたい。だが、敵もあの数だ。救出に意識していたらいくら俺達でも囲まれてあっという間にお陀仏だ。」
カザフの言葉には多少怒りも感じられる。
おそらく、何も出来ない自分が歯がゆいのだろう。
それでも、彼はレストの意見に賛成し、こうして従っている。
それに、明らかにシンは二人と比べると実戦経験が乏しい。
どこでどうでるべきかの判断は、二人のほうがよっぽど優秀だろう。
シン「・・・・っ・・・」
シンは悔しそうに拳を握り締める。
シン「だったら・・・せめて急ぎましょう!」
そういってシンが走りだすが、それを先頭のレストが止める。
レスト「ここで焦って走るなり大声を上げるなりしてみろ。あの泥人形たちが一発で沸いてくるだろう。お前のさっきの叫び声ですら奴らが俺達を見つけるための情報になりうるんだぞ。」
そういわれて、シンは立ち止まる。
今度は、力のまったく入っていない・・・脱力状態とでもいうべきか、レストがどんどん離れていき、追いついてきたカザフに背中を叩かれて、また普通に歩き出す。
シン「・・・くそ・・僕には・・・何が・・」
小さなシンの呟きは誰の耳にも入らずに消えた。